荼毘くんってもしかして… ページ32
冬から春への移り変わりは本当に早いもので、出会った時枯れ葉すらついていなかった木にはもう桜が咲き、時折風が吹いてはひらひらと花弁が舞い散っている。
荼毘さんに再会してからはまた見かけたら話しかけて、またねは言わずにさよならする。今まで通りである。
それにしても、今日は天気がいい、雲一つない晴天だ。
「春ばんざーい！」
そう声をあげて、気持ちの良い空気を全身で感じるようにグッと伸びをする。
肩の火傷はすっかり治った。まだ薄く痕は残っているがお医者さん曰く、少しずつ消えるので問題ないらしい。
新しい１年に胸を躍らせ学校への道を進もうとするといきなり何かに手首をつかまれ物陰に引きずり込まれた。
私物陰に引きずり込まれる確率高いな。じゃなくて。
落ち着け私。こんな事するのは一人しかいない、まだ焦る時間じゃない。いや嘘もう急がないと遅刻する焦らないとか無理！
ふぅ、と息を吐いて、首を回し後ろにいる人物を見上げた。
「荼毘くん、質問なんだがこの状況は一体何かな？」
「見た通りだが？」
「いや分からないんだが？」
いきなり物陰に引きずり込んだ挙句に肩を抱いて見た通りの状況とか意味が分からないんだよね、ハハッ！
「遅刻しちゃうから離してくれ」
「今日からお前三年か」
「そう、途中まで一緒に行く？」
「ああ」
「えっ？」
断られるだろうと提案したのに普通に乗ってくるんだから驚いた。読めないな。
隣を歩く彼を見上げると、悪戯心が湧いてきた。
「ねぇねぇ“荼毘くん”」
私が名前を呼ぶ。そうすると彼は派手にドジりながら怒って私を見つめる。
「てめぇまたやりやがったな」
周りから見れば奇妙な光景だ。成人男性がＪＫの前でドジってそれを盛大に笑われて、何より女の子は怒る彼を見て嬉しそうに笑うのだ。
どういう関係なのか気になってもそれを口にする人はいないだろう。
＿
「私ね、目標作ったの」
「目標？」
「橘川さんに荼毘くんのこと紹介するの、私の彼氏♡って」
「達成出来ねぇ目標だな、可哀想なこった」
「来世ならわんちゃん」
「そういう意味じゃねぇ」
どこまで冗談でどこから本気なのか、それはこの二人にしか分からない。
「あっ」
「あ？」
私の言葉に反応するように足を止めた荼毘くんがずるっと足を滑らせてこけた。
最初に出会った時のような盛大さで。一つ違うのは、こけた拍子に彼が私の胸に飛び込んできたことである。
私は彼の頭をぎゅっと抱きしめてこういった。
「荼毘くん今私の胸に埋もれて幸せ？」
「んなわけねェだろ離せ」
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 484人がお気に入り
お気に入り作者に追加
「ヒロアカ」関連の作品
この作品を含むプレイリスト ( リスト作成 )
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ナナシ - すっごく面白かったです！読み切ってしまったのが残念に思うくらいです。心地よいドキドキ感が味わえて楽しかったです。絶対また読みます！ (2023年4月4日 2時) (
レス) @page40 id: d5c4f7e5a3 (このIDを非表示/違反報告)
素因数分解(プロフ) - 完結おめでとうございます🎉明るくクスッと笑えるあなたの作品が大好きで毎日更新を心待ちにしていました。それがなくなると思うと少し寂しいです。凄く面白い作品です。お疲れ様でした🍵 (2023年3月26日 15時) (レス) @page39 id: 2687d60546 (このIDを非表示/違反報告)
はないかだ(プロフ) - タイトル回収！！しかもヒロアカアニメと同じタイミングとか！！！図ってましたか？？ (2023年3月18日 22時) (レス) @page32 id: d9e7127375 (このIDを非表示/違反報告)
春風いちご(プロフ) - トガちゃん可愛いっ！！尊すぎるぅ… (2023年2月26日 15時) (レス) @page22 id: d57e220c95 (このIDを非表示/違反報告)
シオン(プロフ) - コメント失礼します。先ほどTwitterをフォローさせていただきました。もしよろしければフォロバよろしくお願いします。この作品とても楽しみに読ませていただいてます。頑張ってください！ (2023年2月13日 14時) (レス) @page12 id: fd40c107eb (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：燈 | 作成日時：2023年1月28日 11時
