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29話 ページ29

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「川端A。夏ぶりかな。
随分と痩せたね。」



Aの首周りには首輪のように血が付着している。



「気持ち悪い趣味を押し付けないで。

それに私が異能力を持っていたのは父が勝手に押し付けたからだよ。

自分が譲渡されなかったこと逆恨みしないでくれる?」

「逆恨みなんてとんでもない。
人は死ぬ間際に初めて生に執着する。

私は歳不相応な瞳をした君の死ぬ間際が見たいだけだ。」






人は自分が死ぬ間際に後悔をする。

『未だ〜をしていない』と。

だから誰もが皆人生に1度は『地球最後の日に何がしたい』『もし、明日死ぬなら今日は何をする』という類の話をするのだ。





「『変わらない明日が存在する』なんて甘ったれた考えをしているから死に際になってみっともなく必死で抵抗するのでしょう?

でも、私は知ってる。
『変わらない明日』なんてなんの保証もないことを知ってるわ。

自分の環境が当たり前ではないことなんて理解している。

今の生活が恵まれていることを知っているからこそ周りに感謝して日々努力を続けて生きているの。

私の人生は私一人のものではないわ。」




「君のその反吐が出る様な偽善が大嫌いだよ。

人が死を恐れるのは本能だ。
だからこそ人間とは何かという本性がさらけ出され、見ものなのだよ。」





川端恒太郎がAの顎を掴みあげる。


偽善:本心ではなく見せかけにする善事。

偽善とは自分が死ぬことを厭わず、自分の生を他人に捧げることだとAは考える。

自分は人を救ったと勝手に思い込み、満たされるが他人からしてみれば人生を背負わされ、死ぬ迄逃れることの出来ない責を負う、迷惑な話である。





「私が偽善者な訳が無い。

私、面倒くさいことが大嫌いで自分が死ぬのはもっと嫌なの。

何故誰かのせいで私が死なないといけないの?
自分か他人かだったら自分を取るに決まってる。

私は他の誰でもない私が(・・)恥ずかしくないように、胸を張って生きたと報告できるように生きているだけ。

そんな人が偽善者な訳がないでしょう。」




嘲笑うかのような表情を浮かべるA。




川端恒太郎が自身の血から生成したナイフでAの首に力を込めようとした瞬間。






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「よう、A。偶然(・・)だな」






冷たい空気と共に突如現れへらりと笑った彼が掴んだナイフが崩れ落ちた。







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北窓(プロフ) - 麦茶さん» 返信遅くなって申し訳ありません。ありがとうございます!!!! (2021年1月27日 17時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
麦茶 - セリフの1つ1つがすっごい心に響きます。頑張って下さい! 応援してます。 (2020年9月6日 10時) (レス) id: ccb520a109 (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - 有難うございます!楽しんでいただければと思います! (2020年7月10日 9時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
もぐもぐ(プロフ) - 2章でも頑張ってください。応援してます! (2020年7月4日 6時) (レス) id: 4b8fca2053 (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:北窓 | 作成日時:2020年7月4日 0時

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