【文スト×ヒロアカ】面倒事はお断り。2【中原中也】

21話 ページ21

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新月の夜は好き。
織田作さんや子供達と初めて会った日。
カレーがとっても美味しかった。
あんなに大人数ではしゃいだのは生まれて初めてだったかもしれない。
とっても楽しかった。
心も体も温かくなった日。



新月の夜は好き。
消太さんと初めて会った日。
もう十数回目となる親戚同士の私を誰が引き取るのか喧嘩。
消太さんが社会人として経済的に安定してきっと初めて集まりに参加した日。
誰かの怒鳴り声や金切り声の中、私は静かに隅に座っていた。
だって、誰が引き取ったって同じだから。

でも、貴方は違ったの。
いい歳したおじさんやおばさんが揉めている中、しっかりとした声で『俺が引き取ります』って言って、私の手を引いてくれた。
織田作さんと全く同じ声だから驚いたの。
其れ迄、引き取り先の人の中に私の手をあんなに優しく握って引いてくれた人はいなかったの。
新たな一歩を踏み出せた日。
そして、消太さんの織田作さんと同じ声に縋り付くようになった日。



新月の夜は嫌い。
ヨコハマから離れることになった日。
親戚同士の押し付け合いしかなかった街だけれど、便利だし散歩は楽しかった。
それに、治君や織田作さん、子供達と友達になれた街。
織田作さんと実際に最後に話したのはこの日。
最後に生きてる彼を見た日。



新月の夜は好き。
織田作さんとまた会える様になった日。
ヨコハマから離れて1年。
毎日治君や織田作さん、子供達と会いたいなぁ、なんて願ってたら、ある日急に織田作さんだけに会える様になったから驚いた。
でも、前とは違って私に話しかけては来なかった。
少しだけ困った様に此方を見て笑っていたの。
貴方はいつも、足元が透けていて、宙に浮いていた。
異能力が変異したことに気づいたのはもっと後。



新月の夜は嫌い。
3年ぶりの治君から『織田作さんが死んだ』、なんて聞かされた日。
異能力で幽霊みたいな彼と会う様になってからきっとどこかで気づいてた。
だって、治君にもさくらちゃんにも、こうすけくんにも、かつみちゃんにもゆうくんにも、しんじくんにも会いたいって思っても、みんな、みんな会えないのに、織田作さんにだけは会えちゃうんだもの。

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