3話 ページ4
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Aside
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母は郷外から来た女であった。
そんな女が多夫多妻制など受け入れられるはずもなく、小さい頃から実母から暴行を受けていた。
泣いていては蹴られるので、涙が出なくなった。
笑っていては叩かれるので口角が上がらなくなった。
痛いと言えば首を絞められるので、顔色１つ変えなくなった。
感情なんて存在しなかった。
唯無表情で叫びもしない。
能面のようだった。
それでも母の事が好きであった。
熱が出た時はなんだかんだ文句を言いながら布団で寝かせつけてくれたし、薬を買って来てくれた。
どんなに暴力を振るわれても母であることは変わりなく、赤児の私を育ててくれたのも紛れも無い母であった。
どんな扱いを受けても、結局の所彼女は優しかったのだ。
顔も知らない父よりも、いつも泣きながら暴力を振るった母の方がずっと好きであった。
然し、母にとって父は尻軽男であり、子を孕ませた上に他の女とも子をなす塵男であった。
そんな男との子など愛せる筈もない。
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三ノ宮本家に上がる『紅色』、『紅彩』候補を産んだ女、詰まり母は子供が本家へと引き取られる時に莫大なお金を得られる。
私の母も例外では無く、大金とともに郷の男と結婚し、新しい男の子を腹に宿して私を捨てた。
齢3歳であった。
『紅彩』の資格を得るまでの3年間、汚いぼろぼろの家で放置されて育った。
棄てられた子供だと馬鹿にされ、石を投げつけられ、夜は寒い外で寝た。
お腹が空いた時は泥水をすすった。
反抗期の子供達に髪を引っ張られ、引き摺られながら森の中に放置された。
酔っ払いにマッチで肌を焼かれた。
雨漏りの水が溜まった樽の中に顔を押さえつけられたりした。
井戸に大量の虫と一緒に突き落とされた。
冬は極寒の中、裸足で、着物もぺらぺらのまま外で寝かされた。
痛みを忘れた。
暑さも寒さも感じなくなった。
目に映るものに色が無くなった。
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空の青さを、星の輝きを忘れてしまった。
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降りしきる雪の寒さも、凍りつく景色の美しさも。
雪解けの淡い春の芽吹きも、新たなる生命の温かさも。
光り行く蛍の儚さも、満月に光り輝く小川のせせらぎも。
日暮れ時金色に輝くイチョウも、気になる熟れた果実も。
全て、全て、忘れてしまった。
分からなくなってしまった。
白黒の世界で荒んでしまった。
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秋田犬 - 本当にこの作品が大好きです。私は占ツクで最初に読んだのがこの作品でした。1年半ほど経ち偶然この作品を見かけて、本当に素敵な作品だと感じます。自分が引き込まれてしまう作品でした。大好きです！ (1月3日 0時) (
レス) @page48 id: b4989b061f (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - かわあいさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると書いてよかったなと思います！ (2021年10月7日 22時) (レス) id: 51268113ac (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 面白かったです！！ありがとうございました、！何回か泣いてしまった… (2021年10月7日 19時) (レス) @page48 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - 有難うございます！応援していただき、心より感謝申し上げます！ (2020年7月26日 18時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
sana - 遅くなりましたが、お疲れ様でした〜！ (2020年7月26日 13時) (レス) id: 09fc709cdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年4月22日 21時
