25話 ページ26
「必要だったからだよ。
自分が弱いなんてこと泣き叫んで臓物を吐いてしまうほど知っている。
成功率が1%でも上がるのならば、私は喜んで其れをとる。
ただそれだけの話だ。
其れに、どちらにせよ長くはないんだ。
過去を見たのならば、貴方も知っているだろう。
昔からずっと薬漬けにされ続けて、もう毒薬無しでは生きていけない身体なんだ。
毎日、1日何度も毒を摂取しないと頭がガンガン鳴り響いて前も見えない。
幻覚や幻聴が絶えず私に襲い掛かる。
身体中痛くて立ってられない。
胃液が逆流して止まらない。
手足が痙攣し続ける。
心臓の拍動が歪になる。
この個体を保つ為にも毒が必要なんだ。
其れも猛毒が。」
そう言ってAは病院服の懐から花を取り出す。
「此れだってそうだ。
花として病院に飾られたりはするが。」
そう言ってAは花に吸い付く。
其れが何かに気付いた相澤は手を伸ばし、口から離させる。
勿論包帯ぐるぐるまきの手なのでほぼAの頰を叩く様な感じになったが。
「やめろ。
お前が今やっているのは、お前が1番嫌う、命を粗末にすることじゃないのか。」
怒りながら相澤は言う。
Aが悲しそうに笑う。
「そうだね、そうだ。
命が大切だ、大事にしなければならないなんて、とうの昔から理解している。
でも、此れなしでは生きていけない。
毒は、薬は、
生きたいと願えば願うほど、役に立ちたいと思えば思うほど、毒を摂取する。
そうでなければ身体も頭も機能しないからだ。
一度重度の中毒性を持ってしまったのならば、最早治ることはないだろう。
況してや幼き頃からの習慣なのだ。
治るわけがない。
只々毎日薬を、毒を、喰む。
普通の料理は食べたら戻してしまうため、毒と共に摂取する。
自分の生を殺める事でしか生きられなくなった身体。
Aにとってどんなに皮肉なのだろう。
月明かりに照らされた彼女の横顔がかすかに歪んでいる様に相澤には見えた。
彼女は再び、懐から花を取り出して軽く喰む。
相澤は先程よりも優しく彼女から花を取った。
そのまま頭を引き寄せる。
相澤もAも一言も発しない。
相澤がAから奪った花を握り潰し、2人は横になった。
潰された狐百合と元日草。
月明かりの下、赤と黄が毒毒と鮮やかに色づいていた。
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秋田犬 - 本当にこの作品が大好きです。私は占ツクで最初に読んだのがこの作品でした。1年半ほど経ち偶然この作品を見かけて、本当に素敵な作品だと感じます。自分が引き込まれてしまう作品でした。大好きです！ (1月3日 0時) (
レス) @page48 id: b4989b061f (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - かわあいさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると書いてよかったなと思います！ (2021年10月7日 22時) (レス) id: 51268113ac (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 面白かったです！！ありがとうございました、！何回か泣いてしまった… (2021年10月7日 19時) (レス) @page48 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - 有難うございます！応援していただき、心より感謝申し上げます！ (2020年7月26日 18時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
sana - 遅くなりましたが、お疲れ様でした〜！ (2020年7月26日 13時) (レス) id: 09fc709cdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年4月22日 21時
