17話 ページ18
Aside
沼の中に沈んで行く感覚。
それでも絡みつくたくさんの真っ赤な手が更に下へと私を引きずりこむ。
息がうまくできなくて、もがきたくても、腕が絡みとられている。
ーーーなんでお前は生きているの。
ーーーもっと生きたかった
ーーーお前など生まれて来なければ良かったのに
ーーー生きる厄災
ーーー人殺し
ーーー呪いの子、死神め
ーーーさっさと死んでしまえ
ーーーもっと苦痛に歪めば良い
ーーー死んでもお前を許さない
ーーーお前が幸せになることなんて無いよ
沢山の声が聞こえる。
怨まれているな、なんて人ごとのように思うのに、頰を伝う生暖かい感触。
本当はずっと、思っていた。
少し、疲れてしまったんだ。
ちょっとだけ、休ませて欲しい。
また、ちゃんと歩き出すから。
いつもみたいにちゃんと前を向いて進むから。
陽みたいに笑顔を絶やさない人になるから。
無念も、執念も全てちゃんと晴らすから。
託された物を投げたりなんてしないから。
必ず成し遂げて見せるから。
今だけ、溺れてしまっても良いだろうか。
上を見ても光はもうほとんどさしてこない。
このまま堕ちてしまおうか。
冷たい、冷たい感覚の中、随分と下まで降りてきた。
ちょっとだけ休みたいんだ。
あと少しでこの人生が散ると分かっていても。
これ以上走り続けられない。
だから、許さなくて良いから、
この後もずっと私を締め上げていて良いから、
今だけは目を瞑って欲しい。
そのまま下に引きずり込んで欲しい。
.
ふと、手が繋がれて背中が押される感覚。
閉じた目を開けると、眼に映るのは。
(ーーー紅い、羽根？)
横を向くと、ホークスが眉を下げて此方を見ている。
「俺は、アンタを上へ引き上げることはできないけど、こうして一緒に落ちて行くことはできる。
俺も、アンタと同じだから。」
悲しそうに笑った彼にも真っ赤な手が何本も伸びている。
公安直属のヒーローとして、国家を守る為に身を汚してきた彼だからこそ、こうして共にいることができるのだろう。
「でも、分かっているだろ？
ここはまだ、俺の居場所でもアンタの居場所でも無い。
全て終わったら、2人でまた、ここで会おう。
待っている人たちがいるんだ。
少しだけ、上に行く手伝いをするよ。」
彼がそう言うと、羽根に背中を押されて、2人上へと登って行く。
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秋田犬 - 本当にこの作品が大好きです。私は占ツクで最初に読んだのがこの作品でした。1年半ほど経ち偶然この作品を見かけて、本当に素敵な作品だと感じます。自分が引き込まれてしまう作品でした。大好きです！ (1月3日 0時) (
レス) @page48 id: b4989b061f (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - かわあいさん» コメントありがとうございます!そう言っていただけると書いてよかったなと思います！ (2021年10月7日 22時) (レス) id: 51268113ac (このIDを非表示/違反報告)
かわあい - 面白かったです！！ありがとうございました、！何回か泣いてしまった… (2021年10月7日 19時) (レス) @page48 id: 173f9610a3 (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - 有難うございます！応援していただき、心より感謝申し上げます！ (2020年7月26日 18時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
sana - 遅くなりましたが、お疲れ様でした〜！ (2020年7月26日 13時) (レス) id: 09fc709cdd (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年4月22日 21時
