11話 ページ12
「今晩は。色香殿。
本日はお招きいただき有り難く存じます。
普段から弊社の…
長々と続く挨拶と此方を見る愛想笑いに飽きたAはビュッフェに目を惹かれていた。
2年が経った今も作り慣れていない洋食に眼を光らせる。
初めてローストビーフを見た時は赤い生肉だと思い、食べようとしていた相澤のフォークをはたき落したのだ。
本人は生肉を食べるとお腹を壊すので急いで止めようとしたのだが、勢が強すぎたため、フォークもろとも吹っ飛んでしまったのだ。
レストラン中の視線が集まり、恥ずかしい思いをした事は今でも忘れない。
真剣な顔のAに呆然とした相澤。
その後暫くは相澤は笑っていた。
彼があんなに笑ったのは初めてだった。
生ハムメロンを最初に食べようと決めた時。
「して、本日ご一緒の可愛らしいお嬢さんはどちらの御令嬢で？」
急に相手の注意が此方を向く。
「御令嬢では無いのですが、将来有望なため今日は挨拶をと思い、連れて参りました。」
そう言った色香に続く。
「ご機嫌麗しゅう。
お初にお目にかかります、水梨 春香と申します。
以後お見知り置きを。」
組んでいた腕をほどき、軽く礼をする。
サラリと垂れた絹のような細い艶やかな髪にふわりと舞った淡い若葉色のドレス。
香る柔らかな匂い。
その場の者は見惚れた。
白い肌に細くて長い手足。
大きな瞳に化粧は薄いが、ドレス負けしない綺麗な顔。
優雅な動作に背筋の伸びた立ち姿。
自然な花のような笑顔。
しっかりとした作法に、知性を感じる話し方。
令嬢で無いことに周りは驚く。
周りが見惚れているのを他所に、色香は腰に手を回し、その場を去っていく。
歳は違えど精悍な彼と可憐な彼女は絵になるのだ。
何十人もの人と同じような挨拶を繰り返す。
流石に疲れてきた彼女は色香に断りを入れてその場を離れ、食事を取りに行った。
刺さるような視線に些か居心地の悪さを覚える。
此方を凝視してくる女性達をスルーしながらホークスを探す。
こう言う時、気配を消す訓練は役に立つのだ。
人の死角を縫ってすいすいと歩いて行く。
ホールの右奥に人だかりができているのが見えた。
輪の中心にはホークスの姿が。
今日はしっかりと正装をしているらしく、普段のサングラスも付けていない。
女性方に囲われている。
此れは声をかけないほうがいいと判断したAは踵を返し、料理を持ってバルコニーに出る。
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りんご - 面白いですね！更新頑張ってください！ (2020年4月22日 13時) (
レス) id: 4d3c7a1e9c (このIDを非表示/違反報告)
北窓(プロフ) - 桜さん» 教えて頂き有難うございます！頑張ります！ (2020年4月21日 23時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
桜 - コメントはログインとかしてなくてもできますよ。コメントした人の最後の方にあるレスってやつを押して、感想の所に文章を打ち込んで投稿を押したらできます。説明が分かりにくかったらすみません...更新頑張ってください！！！ (2020年4月21日 18時) (レス) id: ced64b0a1f (このIDを非表示/違反報告)
卵かけご飯4280 - 面白すぎます。もう神ですね。小説の至高の領域に入ってます。がんばってください (2020年4月21日 8時) (レス) id: 0b8a9b50ed (このIDを非表示/違反報告)
ゆめ - この作品めちゃめちゃ好きです！ハンターハンターっぽいとこもあってそこも個人的に好きです笑笑更新頑張ってください！！ (2020年4月18日 1時) (レス) id: 52068ce325 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年4月1日 21時
