36話 ページ37
轟と会った後、型の変換練習をし終えたA。
全身は筋肉痛で上手く動かない。
肺がギシギシと音を立てそうだ。
血管一本一本全てに血流が流れているのを感じながら寝転がった。
(ーーー型を連続で出し続けられるのは2時間程度。
戦闘中はもっと動くだろうから、もう少し短いだろう。
圧倒的に持久力が足りない。)
重い身体を無理やり起こし、柔軟をする。
気持ち良くて寝そうだ。
寒さは感じられない。
柔軟を終え、草叢の中で仰向けに寝転がる。
今夜は新月だ。
星が綺麗だ。
風が吹き荒れる中、宙に手を伸ばす。
(ーーー昔、星を掴みたい、なんて考えてたよなぁ。)
思い出すのは未だ鬼を知らなかった頃。
いつも隣に居た太陽の様な男の子。
屋敷から出ることは許されていなかったから、広い庭で2人で横になって星を見ていた。
地獄の様な訓練も。
彼と一緒に這い上がってきた。
感情の起伏がほぼ無かった私の代わりに彼は沢山泣いて、笑って、怒って。
何時だって私達は2人だった。
(ーーー彼が死んでから笑える様になっただなんて皮肉なものね。)
最初の感情は激怒と憎悪。
其れだけが彼の前で見せた感情だった。
業火の中肌が焼け爛れるのも気にせずに、
全身骨の折れた身体を引きずって、
目と髪のなくなった彼の頭を抱きしめた。
血と焼けた肉の匂いが頭にこびりついている。
「嗚呼、強くならなくては。
強くなって彼の人の元に帰らねば。
やり遂げなくては。
託されたのだから。
願われたのだから。
あの日を忘れるな。
頸を斬れ。
鬼を滅殺しろ。
決して許すな。
負けること勿れ。
心臓だけになっても頸を斬れ。
絶対に帰ってみせる。」
そう自分に言い聞かせる。
目元を覆う。
彼女にとってA組は暖か過ぎた。
大切な人が殺される、身を焦がすほど復讐を誓う。
彼等にはそんな感情抱く事なく、幸せに暮らして欲しいのだ。
風が吹き荒れた。
「ほら、そんな所で寝転がってたら風邪引くぞ。
さっさと帰って風呂入れ。
俺も寒いんだ。戻るぞ。」
そう言って手を差し伸べたのは、相澤だった。
Aは手を握ろうとするが、疲労で力が入らない。
「…何やってんだ。」
そう言いながらAを引っ張り起こしてくれる。
2人で寮に向かって歩き出す。
(ーーー嗚呼、なんでこの人はこんなにも暖かいんだ。)
この2年、辛い時は何時もそばに居てくれた。
優しい彼の隣は存外心地良いのだ。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 410人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「ヒロアカ」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
ゆきな(プロフ) - はえ〜…好き (2020年3月19日 3時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 待って泣く泣くてかもう泣いちゃたー！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月15日 3時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - 随分遅れましたが続編おめでとうございまーす！！！！！これからも更新頑張ってください、応援してます！ (2020年3月14日 9時) (レス) id: 9d8d7fe98a (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 帰れない！嘘、(゜゜;)とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月14日 0時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 最初から最後まで、読みました！とても面白かったです( ≧∀≦)ノ後ランキング5位おめでとうございます！(* ´ ▽ ` *)ﾉ (2020年3月13日 10時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：北窓 | 作成日時：2020年3月12日 23時
