39話 ページ40
ふと人がすぐ近くで動いた気配によって意識が浮上した。
Aは即座に跳びのき、警戒態勢に入る。
「わりぃ、起こしたか？
体温上がってたから、右で冷やそうと思ったんだ。」
驚いた顔の轟と目が合った。
ほっと息を吐いて体勢を崩す。
鬼狩りをしていた時は夜、外で寝ながら鬼を待つなんてことも多々あった。
その為、寝ている時に近くで動くと過剰に反応してしまうのだ。
「驚かせてすまないね、気にしないでくれ。
気遣いどうも有難う。
柔軟は終わったかい？
体を痛めるといけないから、よくやっておくんだよ。
もう暗くなって冷えるから寮に戻ろう。」
あぁ、気絶したのか、なんて思いながら、合わない焦点でなんとか轟をとらえる。
三半規管の麻痺により、平衡認識能力の低下。
地面が近付いて来るのがぼやけて見える。
その次の瞬間、体を前に押される感覚と共に、腹回りに腕が回り、脚が地面から離れる。
ふわりと香る甘いニトロの匂い。
「ッチ、ふらふらしてんじゃねぇよ、カス。
さっさと寝てろ。」
身体を抱え上げられ、揺られながらも人の体温を感じる。
(ーーーあぁ、温かい。)
昔も稽古の最中に気絶して道端で野垂れていた時は、風柱が迎えに来てくれて、なんだかんだ言いながらも負ぶって屋敷まで運んでくれたのを思い出す。
大きな背中に硬い筋肉。
手はゴツゴツしていて傷だらけ。
白くてふわふわの髪は風になびき、光が透き通る。
優しい彼を思い出しながら、身体を預ける。
爆豪side
昨日よりも速く走ってやろうと思って、ペースを維持しつつ全力疾走に近い形で走り続けた。
風が吹き抜けたと思ったら、ゴマ粒ほど小さくなったアイツがずっと前を走っているのが辛うじて見える。
目に見えてわかる圧倒的な差が屈辱的だった。
昨日気付いた、腕の傷跡。
昔の跡が消えていないのだろうか。
切り傷、擦り傷、酷い火傷。
女なのに分厚い手のひらに硬い表皮。
ガリガリに痩せてて柔らかさのかけらもない体についている筋肉。
化粧っ気のない顔に装飾は頭のリボンだけ。
どれだけの努力をしたのか計り知れないのが一目見てわかるのもまた癇に障った。
あの日見た金色の髪も、真紅の瞳も、今はカケラも見当たらない。
何時も何となく寂しそうな瞳。
話す言葉の一つ一つが重くのし掛かる。
いったいどんな人生を歩んできたのか。
想像もつかない。
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ゆきな(プロフ) - はえ〜…好き (2020年3月19日 3時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 待って泣く泣くてかもう泣いちゃたー！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月15日 3時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - 随分遅れましたが続編おめでとうございまーす！！！！！これからも更新頑張ってください、応援してます！ (2020年3月14日 9時) (レス) id: 9d8d7fe98a (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 帰れない！嘘、(゜゜;)とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月14日 0時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 最初から最後まで、読みました！とても面白かったです( ≧∀≦)ノ後ランキング5位おめでとうございます！(* ´ ▽ ` *)ﾉ (2020年3月13日 10時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年3月12日 23時
