10話 ページ11
「…お前の心、限界じゃねぇか。
…こっち来い。
悪い、触るね。」
そう言って相澤はAの背に手を回す。
「な…にを。」
そう言った瞬間頰に違和感。
透明な液体が膝に落ちる。
(ーーーこれ、は…涙？
何故？赦されてないじゃない。
泣く資格なんて持ち合わせてないのに。)
「ほら、俺は何も見てないし、聞こえないよ。」
そう言って相澤がAの背を撫で瞬間。
涙が溢れて止まらなくなる。
口から嗚咽が漏れた。
「1人に、しないで欲しかった。
2人で、本家に上がりたかった。
死なないで欲しかった。
炎が、血が、赤が、夜に光る度にあの日を思い出した。
怖かった。
苦しかった。
悲しかった。
悔しかった。
何も出来ない、鬼にただ潰された無力な自分が憎かった。
泣きたかった。
怒りたかった。
叫びたかった。
仇を討ちたかった。
不安で押しつぶされそうだった。
気が狂いそうだった。
止まりたかった。
止まれなかった。
止まることを赦されて居なかった。
闇夜に光る此の黄金の髪も、
鬼と同じ、真紅の瞳も、何もかも、
捨ててしまいたかった。
要らなかった。
平和に暮らしたかった。
師範の元に帰りたい。
彼の人に大切な事全然伝えられていない。
彼の人の期待に応えられていない。
彼の人と肩を並べられていない。
稽古をつけて欲しい。
くだらない日常を過ごしたい。
笑顔を向けてほしい。
抱きしめてほしい。
褒めて欲しい。
彼の人のそばにもっといたい。
彼の人の願いの手伝いがしたい。
彼の人の進む先を見たい。
彼の人に稽古をつけて貰って、
継子にして貰って、
大切にして貰って、
沢山恵まれて、
其れでも鬼に勝てない、
恩返しが出来ない自分が情けない。
悔しい。
赦さない。
許せない。
帰りたい。
師範の元へ帰りたい。
帰らせて。
ねぇ、帰らせて。
帰らせてよ、お願いだから。
私からもうこれ以上何も奪わないで。
その為なら朽ち果てたって構わないから。
もう嫌なの。
目の前で大切な人が死んでいくのを見るのが。
助けられない自分が。
全てが終わって事実を知る自分が。
未来へと繋げない自分が。
前へ進めない自分が。
帰りたいの。
もう嫌なの。
疲れたの。
帰りたい。
帰りたい。」
そう言いながら泣くAをあやすように相澤は抱いてやる。
とめどなく溢れる涙。
口から出るのは隠された本音。
事件以来、Aが初めて泣いた夜。
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ゆきな(プロフ) - はえ〜…好き (2020年3月19日 3時) (
レス) id: e7791cc44f (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 待って泣く泣くてかもう泣いちゃたー！｡ﾟ(ﾟ´Д｀ﾟ)ﾟ｡とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月15日 3時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - 随分遅れましたが続編おめでとうございまーす！！！！！これからも更新頑張ってください、応援してます！ (2020年3月14日 9時) (レス) id: 9d8d7fe98a (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 帰れない！嘘、(゜゜;)とても面白かったです( ≧∀≦)ノ (2020年3月14日 0時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
抹茶タピオカ2号(プロフ) - 最初から最後まで、読みました！とても面白かったです( ≧∀≦)ノ後ランキング5位おめでとうございます！(* ´ ▽ ` *)ﾉ (2020年3月13日 10時) (レス) id: 48661705e7 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：北窓 | 作成日時：2020年3月12日 23時
