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47話 ページ49

広くて大きな背中には傷が一つもない。

唯ひたすらに真っ直ぐ前を見つめて自分の道を歩み続ける。


私が見るのは何時も彼の人の背中で。

『殺』と言う文字が大きく書かれた白い羽織。

汚れていないのはそれだけ彼の強さと努力が窺える。

風が吹いて羽織や髪が靡く。

白と緑は彼の色だ。


見るのは、憧れるのは何時だって彼の背中だった。

頼りになる背中が何時だって挫けそうな心を支えてくれた。

目標であり、道標であった。

彼と共に暮らす内に一族の命令だった鬼狩りの意味が変化していった。


彼の人に近付きたくて。

何時の日かは彼の背中を任せられる存在になりたくて。


沢山叱ってくれた。

沢山からかわれた。

沢山褒められた。

沢山頭を撫でてくれた。

沢山笑い合った。

沢山指導してもらった。

沢山気に掛けてもらった。

沢山連れ出してくれた。

沢山貰った。



「行ってらっしゃい。」と言うと、嬉しそうに「おう。」と返し、胸元に引き寄せ、安心させてくれる。

彼の心臓の音を聴くことで生きていると実感出来た。



春は風で桜の花びらが舞っていた。
木苺を採った。

夏は夜に川辺で蛍を見た。
カブトムシを探した。

秋は夕焼けで紅葉した葉が輝いていた。
栗の棘で手を刺した。

冬はかまくらを作った。
2人で火のそばで暖を取り合った。



大きな屋敷に二人。
だけれど少しも寂しくなくて。

彼の居ない屋敷はとっても静かで。
心細い夜だった。

長期任務の時は手紙を書いてくれた。

心配してくれていた。





存外暖かい男であった。

存外優しい男であった。

存外愛情深い男であった。

存外笑顔が似合う男だった。

存外安心出来る人だった。

存外まめな男であった。

存外受け入れてくれた。

存外頼ってくれた。

存外繊細であった。

存外人間性の富んだ人だった。

存外照れ性だった。

存外不器用な人だった。

存外素敵な人だった。

存外憧れた。

存外遠い存在だった。

存外彼の隣は居心地が良かった。

存外一緒に居たいと思う様になった。

存外背中を任せて欲しいと思う様になった。

存外私の中で彼の存在が大きくなった。

存外一人にしたくないと思った。

存外居なくならないと約束した。

存外幸せにしてくれた。

存外好きになった。

存外愛しく思った。









彼の人は私にとって掛け替えのない存在となった。

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北窓(プロフ) - さやさん» そう言ってもらえると嬉しいです!読んで下さりありがとうございます! (2020年8月13日 10時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
さや - え、やばめっちゃおもろい...戦闘シーンの書き方とか想像しやすくて好きです...楽しんで読ませていただいております...! (2020年8月7日 17時) (レス) id: 66bfdf92b1 (このIDを非表示/違反報告)
バカで変人な天才 - めっちゃ面白いです。更新がんばってください! (2020年3月12日 18時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうよもや - 瞬発的に高評価押してしまった (2020年3月12日 3時) (レス) id: eec7269bb9 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - めっちゃ面白いですね!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます (*´˘`*) (2020年3月10日 23時) (レス) id: 9d8d7fe98a (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:北窓 | 作成日時:2020年3月6日 16時

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