24話 ページ26
ふふ、と笑い声が聞こえる。
鬼は笑うのをやめて彼女を見る。
「何がおかしいんだい?」
「可哀想? 人間が?
だったら奪わなければいいじゃない。
喰べなくても死なないなら喰べなければ良いじゃない。
貴方達は苦しむべきだわ。
貴方達がいるからまだ生きれた命が亡くなっていくのよ。
生きたまま身体を食べられる恐怖が分かる?
眼の前で大切な人の命が消えていくのを見た事がある?
明日大切な人が死ぬかもしれない。
次会えるかなんてわからない。
夜が来る度に不安になるの。
それでも私達は闘うのよ。
いつか私達の子孫がまた明日も大切な人に会える、当たり前のように普通の暮らしが出来る日が来ることを願って。
眼の前で消えて行く仲間達がどんな思いで戦っているか分かるかしら?
致命傷を負って苦しいはずなのに流れる涙が悔しいと叫んでいることを知っている?
彼等はまだ死ねないんだ、大切な人を守りたいんだ、と最期まで抗うのよ。
貴方達は再生すれば良いけれど、人間は1度手脚を失ったら戻っては来ないわ。
それでも私達は諦めない。
鬼は必ず滅する。
私達の代で出来なくても、想いは受け継がれていくわ。
必ず貴方達全員の頸に私達の刃が届く日が来る。
貴方達が私たちの何を知っていると言うの。
何も知らないわよね。
覚えてないでしょう。
貴方に寄り添ってくれた大切な人を。
貴方の側で笑って幸せをくれた人を。
貴方の為に怒って泣いてくれた人を。
貴方に沢山の愛情を注いでくれた人を。
貴方が愛した人々を。
貴方を育てる為の周りの努力を。
貴方の生への願いを。
私達は貴方達鬼に確かにたくさんのものを奪われたわ。
それも掛け替えのない存在を。
でも、まだ守るべき存在が沢山あるの。
絶対に死ねない。
生きて帰らなくては。
約束したのよ、大切な人と。
必ず生きて彼の人の元へ戻る、と。
待っている人がいる、大切な仲間が待っててくれる。
そんな私達の生き方は可哀想ではないわ。
私からしたら貴方達の方が憐れだわ。
記憶を無くし、大切な人を忘れ、仲間を作る事ができない。
貴方達が生きることに何の意味があるのかしら。
意味がないのならば死んで道を譲りなさい。
奪うだけの存在に価値なんてないわ。
何度でも言うわ。
私達は可哀想でない。
沢山のものを奪われたけれどもまだやる事がある。
分かったらさっさと死に腐れ。
そして私に道を譲りなさい。
まぁ、露程も無い命でしょうけれど。」
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北窓(プロフ) - さやさん» そう言ってもらえると嬉しいです!読んで下さりありがとうございます! (2020年8月13日 10時) (レス) id: 5a0c901b45 (このIDを非表示/違反報告)
さや - え、やばめっちゃおもろい...戦闘シーンの書き方とか想像しやすくて好きです...楽しんで読ませていただいております...! (2020年8月7日 17時) (レス) id: 66bfdf92b1 (このIDを非表示/違反報告)
バカで変人な天才 - めっちゃ面白いです。更新がんばってください! (2020年3月12日 18時) (レス) id: 9900cccf42 (このIDを非表示/違反報告)
まんじゅうよもや - 瞬発的に高評価押してしまった (2020年3月12日 3時) (レス) id: eec7269bb9 (このIDを非表示/違反報告)
つむぎ - めっちゃ面白いですね!これからも更新頑張ってください!楽しみにしてます (*´˘`*) (2020年3月10日 23時) (レス) id: 9d8d7fe98a (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:北窓 | 作成日時:2020年3月6日 16時