#38「決心」 ページ38
Aside
.
「…ちょっと、ゾム？」
「過去にもう地獄を見てるんや。もう、Aが苦しめられる理由なんて無いはずや」
「………ゾム」
今までそんなことを言ってくれる人など居なかった。
不意に霞む視界を慌てて拭った。
「ま、詳しくは帰ってからやんな。んで、結局どうするん？」
「…私は……」
決めた。今度は迷わずに私はこう言った。
「…私は罪を背負うことにした。私が殺してしまった人々の為にも、私の両親の為にも。」
「…後悔せんでな」
「…殺るならやれ。」
「………さようなら。」
私は内ポケットから拳銃を取り出して奴の眉間めがけて撃った。
パァン、と乾いた音が響いた。
奴はドサッ、と血を流しながら倒れ、痙攣していた。
やがて、動かなくなったんだ。
最初で最後の、自分の意思で人を殺した瞬間だった。
「…終わった」
「帰るで。A」
「………」
「………A？」
「…………っふ、うぁ、ぁ……」
自然と涙と嗚咽が溢れた。
自室につくまで我慢しようと思っていたのに。
それは止まることなく溢れた。
「…わたし、わたしが…」
「…お疲れ様、A」
ふと、暖かいヒトの体温が私を包んだ。
嫌悪感はなかった。
そして、安らかな未来を約束するような…そんな気がした。
そして、意識は途切れた。
.
zm side
.
「…辛かったよな、A」
倒れた彼女を軍医室に運んでいる途中に、そう呟いた。
彼女は一体どれだけの苦しい思いをして生きてきたのか。
兵器として扱われていたことを知った時は、ショックだったと思う。
自分が何の為に生きているのか。
それすら見いだせないような状況下に置かれていたのかもしれない。
そう考えると、胸が痛む。
「もう、無理なんてしなくてええのに」
何でもかんでも一人で抱え込んでしまう彼女は、もう少し周りを頼るべきだと言いたいが、過去の話を聞いていると、頼りたくても、頼るような相手も居なかったのかもしれない。
ふと、俺は彼女の支えになりたいと思った。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 82人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を含むプレイリスト 
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
アイク - ええやん( =＾ω＾) (2020年3月5日 10時) (
レス) id: 527cd6ca75 (このIDを非表示/違反報告)
*world*(プロフ) - wrwrdコミック買って久しぶりにありかどんの作品見たら色々神作量産してて嬉しさがやばい(語彙力)前垢ログイン出来なくなったか垢また作りやしたぞ (2018年2月18日 12時) (レス) id: ecbf161005 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
