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アンチくん7 ページ10

「鉄。今週一番の作品だと思ったものは何かな?」


「え、あ、おう。ええっとだな、今週はその……、
まだ本誌を読んでねぇっつーか……」


「へーそうなんだ。鉄が本誌見てないとか珍しいね。でも、昨日は休んでたからいくらでも見れたんじゃない?風邪が辛くても読む派の人でしょ、鉄」



持ってきたスナック菓子をつまみながら問う。
一鉄はあからさまに目を逸らして口籠った。
何か言い訳を探している。

私はぐるりと部屋を見渡す。
特にこれといって変わったものは無いが、先程の一鉄の慌て様が気になったのだ。

この部屋に絶対何かあるはず。そう思って本棚の一つに目をやると、本棚と本棚の間に小さな紙が挟まっているのが確認できた。



「……鉄。あれ、何?」


「!!」



その紙を指差して問うと、一鉄はビクリと肩を震わせる。私はそれを見逃さなかった。



「ねぇ、あれ、何?」


「うぇ、あ、えっと、っすね……、あ、あー!そうだあれは、その、うん。俺が鼻をかんだティッシュだようん!」


「嘘が下手すぎるし、もし仮にそうだったとしても
なんであんなとこに挟んでんだよ気持ち悪いわ」



核心を突かれて傷付く一鉄を他所に、私はその紙を
本棚から引き抜く。紙は何の抵抗もなく抜けた。

紙には文字が書かれており、よく見てみるとその紙は映画館のチケットだということが分かる。
ちなみに一人分である。


発行日時は昨日の午前中。チケットには

『鬼滅の刃 無限列車編』

と書いてあった。



……



「………鉄」


「キャアアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ‼」


「まさか、ねぇ。欠席した理由が……映画ぁ???」



ゆっくりゆっくりと一鉄との距離を詰める。
一鉄はガタガタとみっともなく震えながら後退した。



「ち、ちちちちちちがっ、違うんだって!!
これには深海よりも深い訳があってだなああ!!」


「じゃあ今週の話題は映画の感想にしようか……
なぁ?鉄よ」


「煉獄さんはクソカッコよくてエンムサーンはとても程よくイカれてて猗窩座の過去をもう知っちゃってるから血鬼術でまぁ泣くわなつーか声がすごぉい煉獄さんの散り際なんか本当に惚れた抱いてほしいけどすまん俺の推しは冨岡すぁんなんだ最後出てきてくれてよかったあー幸せ放題入場特典も貰えた良かった」


「お前多分一番ファンライフを謳歌してると思う。
あ、後で特典見せて」


「あたぼーよ」



この後めちゃくちゃ盛り上がった。

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作者名:惰眠の雑食 | 作成日時:2021年3月21日 0時

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