JUMP短編集2[hkin多]

2文字 hkin ページ12

伊野尾side



慧｢...んーー｣

光｢眠いの？｣

慧｢...んーん｣

光｢...｣


いつもと変わらない日常


部屋でベースを弾くひかるの背中に背中を合わせて押しかかる



重いだろうな
弾きずらいだろうな


っていうのはもう思わないくらいに気を使わなくなった



そんな気を使うことよりもくっついていたい


それならベースをやめて甘々すればいい話じゃないかと思うが、違う。


俺はひかるのベースが聞きたいんだ




ひかるのベースは家でしか聞けない
俺しか聞けない




・


半年前

いつもより遅く仕事が終わり、会社を出たのは夜の10:00だった


周りを見渡せば人がいる気配はなく電気も俺がいる部署しかついていなかった



慧｢あー、疲れた｣

明日も定時で仕事だ
早く帰ろう
と、足早に会社の最寄り駅に向かったのだが、その途中でギター片手に歌ってるやつがいた



路上ライブをするやつは大体はお金を貰うためにギターのケースを開いているが、そいつは閉じて背中に背負っていた



何となく気になって足が止まった




頭では
明日も早いから早く帰らなきゃ
ってわかってるのに、足が動かない



別にギタリストが好きなわけじゃない。路上ライブを巡ってる訳でもない。

ただ、そいつの顔と声と生き方に目を惹かれてしまった




"ピコン"



なんてタイミングの悪い母親からのLINEだ


母『そろそろ終電よね？大丈夫？』



もう27にもなる息子にこんなLINEを入れるなんてだいぶ過保護だ



慧『大丈夫だから。先寝てて』



LINEを打ち終わったと同時に彼のライブが終わった



光｢今日もありがとうございました。｣


深々と頭を下げ、あげた瞬間にニコッと笑ったら俺の前にいた女子達は歓声のような声をあげた


人気者なんだ

イケメンだもんな



彼は帰る女子達を見送ると、自分も帰り支度を始めギターケースをまた背負い立ち上がった


光｢？｣

慧｢っ！｣


目が合ってしまった

光｢ありがとうございます｣

彼は律儀に頭を下げ俺の方に寄ってきた



光｢初めまして。八乙女光です。今日は聞いてくれてありがとうございます。遅い時間なんですが平日はほぼ毎日10:00からここでやってるのでまたぜひお願いします。｣


そう言ってハガキサイズの紙を渡してきた

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