嫌な甘い香り ページ9
曲がり角で例の事件があった後、Aは某有名ケーキ店に誕生日ケーキを受け取りに向かっていた。
「えーと、誕生日ケーキの予約なんですけど…」
Aはスマホの予約画面を店員に見せる。
店「あっ！かしこまりましたー！！」
店員は業務用の冷蔵庫からケーキの箱を取り出す。
店「こちらでお間違い無いでしょうか？」
店員は箱の上の透明な所から中身を見せてくる。
その中には「happybirthday 牛沢」と書かれたチョコのプレートとイチゴが多く乗っているいかにも大道のケーキといったものがある。
「はい、コレです。」
店「ありがとうございましたー！」
Aはケーキの箱を持ち店を出る。
「………牛沢って名前書いてて店員さん困惑しただろうな」
そんな独り言を呟きながらAはパーティのことを考え、無意識に帰る足を速めていた。
「ただいまー」
Aは自宅ではなく牛沢の家の扉を開けていた。
キ「お、おかえりーA」
レ「ん、案外早かったなA」
「おー、飾り付け上手いな」
扉を開け、目に入った玄関から廊下まで、カラフルな輪飾りが飾り付けられている。
「コレは随分張り切ったね」
キ「ヤバい俺飾り付けのセンスあるわ」
レ「俺の方が上手いぞ」
「張合いの規模ちっさ」
クックッと喉を鳴らしてAはあまりの馬鹿らしさに笑う。
キ「まあ後1時間もすればガッチさんうっしー連れて来てくれる筈だしマキで進めよう」
「おー！」
レ「頑張るぞーい！」
そう啖呵を切ると三人は爆速で作業を進める。
『ピロリン♪』
「お、LINEだ」
レ「んじゃそろそろ来るんかな？」
「……………へ？」
思わぬLINEの内容にAはヘタリと床に座り込む。
キ「え？どうしたのA」
「…ど…どうしようキヨ！レトさん?!」
Aはぽたぽたと大粒の雫を零す。
レ「な、なに？！」
「うっしーが、うっしーがぁ！」
「うっしーが死んじゃう！！！！」
Aはそれからどう走ってどう言葉を発したかも覚えていない。
ただ、ガッチさんから送られてきた病院へただ走った。
車を出して貰おうとか、タクシーに乗ろうとかそういう脳はパニックを起こしたAには無かった。
『うっしーがトラックに撥ねられた』
その文章はAには余りにも酷なものだった。
部屋を動けなかったAの背中を2人は押して共に病院へ向かう。
飾り付けの途中の部屋にはイチゴとクリームの甘い香りが広がっていた。
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作者名：Yとさん。 | 作成日時：2022年11月14日 22時
