朧 ky.side ページ41
俺とレトさんは二人でイチョウ並木の道を歩く。
キ「そういえば二人で歩くのは久しぶりだね」
レ「ん？ああ…確かにそやな」
今まで二人で歩く事は山ほどあった。
でも最近、二人での機会は少なかった。
それはやっぱりAが関係してる。
何年も前、Aと出会った日からアイツがどこかにいつもいた。
Aと誰かっていう組み合わせはよくあったけど、今みたいに他の人と二人とか三人になるのはあまり無かった。
それはやっぱり、アイツが人を引き寄せやすい人間だからだと思う。
レ「俺さ、偶にAの事で頭を悩ますねん」
キ「Aで？」
レ「…まあお前らの事でも悩ますことはあるけど」
キ「とんでもない皮肉を感じた」
確かに俺も偶に奇天烈な行動とるけどさ…。
レ「アイツって、やっぱりどっか危なっかしいねん」
キ「そうだね」
レ「表面はダイヤみたいに硬くて傷一つなく綺麗に見えるねんけど、近づいて弱そうなとこちょっとつついたらボロボロ崩れてくような感じ」
キ「…脆いよ、Aは」
レ「…過保護になるつもりは無いけど、アイツは守らな絶対いつかぶっ壊れる」
レトさんは俯いてポッケに手を入れる。
レトさんがいると残り少ない散っていくイチョウの黄色が映える。
キ「俺も、Aは壊れて欲しくない」
レ「俺らみんなそう思っとるやろな」
面白いくらいにAは真っ直ぐだ。
俺達のふざけたノリにもしっかり悪ノリするしツッコミする。
それに俺達を信用しすぎてる。
いつか本当に詐欺に遭うと思う。
レ「俺達が今失いかけとるのは、多分うっしーだけやない」
キ「…うん」
分かってる。
今うっしーが記憶を本当に取り戻せなくなって、間接的に死んでしまえば…
キ「きっと、Aが壊れる」
Aは俺達や大切な人のことになると本当に全てを投げ出してしまうような危なっかしいところがある。
利点でもあるが、確実にデメリットでもある。
レ「…俺、怖いんや。Aが朧みたいに消える夢見てからアイツがすぐにどっか行く気がして」
キ「Aが消える夢？」
レ「……Aが、Aが元からそんなやついなかったみたいに、消える夢」
Aが存在ごと……。
そんな事はありえない、
そう思いたい。
キ「そんな事、絶対にさせないよ。俺らが足引っ張って地の底まで引きずり下ろしてやるからさ。」
レ「…ふはっ、そやな。」
そんな馬鹿話をしながらカフェの見える方へ進む。
ああ、木造なんだな。
いい雰囲気のお店だ。
好きそう。
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作者名：Yとさん。 | 作成日時：2022年11月14日 22時
