覚えのある顔 uszw.side ページ31
「ところで、佐々木さん」
牛「どうしたのA」
俺はカップに注がれたコーヒーを啜りながらAを横目に見る。
「その格好寒くない？ダイジョブ？」
牛「ああ、超寒い」
「えっ、早く言って？！」
牛「ふっ、別に今は寒くないよ。暖房付いてるし」
「いやいや病人は労らないと」
Aはそう言いながら羽織っていた上着を脱いで俺の膝に掛ける。
牛「いやいや良いよ。Aが風邪ひくから」
「Aさんの頑丈さ舐めんなよ？風邪ひくのは一ヶ月に一回程度なんだから」
牛「結構あるじゃねえか」
「佐々木さんのほうが明らかに薄着なんだから遠慮なく使ってくれよ」
牛「…なら借りる。助かる」
膝に掛けられた厚めなコートっぽい服を肩に羽織る。
Aがさっきまで羽織ってたからか少し温かい。
「お、ドーナツ美味そう」
牛「確かに、んなら頼むか」
「佐々木さんはなんか食べたいのある？」
俺今ちょっと小腹空いてるんだよな。
お、ワッフル美味そう。
牛「俺その…」
「ワッフル美味そうだな。これにする？」
よく分かったな？
確かにメニュー表の中でも美味そうなやつだが。
牛「それにするよ。よく選ぶもんが分かったな」
「あー……佐々木さんならコレかなって思ってね」
牛「本当に俺と…牛沢と長い付き合いだったんだな」
「まあね。君が思ってるより深い仲だよ」
…申し訳なくなってくる。
俺は牛沢じゃないから、Aにとっての俺になれない。
その…深い仲ってのも分からない。
牛「俺がアンタにとって、どういう位置の人間なのか…まだよく分からない」
「位置……」
牛「週に何回程度会うのか、どんな話をするのか、どの程度の付き合いなのか、それが分かんないんだ」
「ほう…端的に言えば裸の付き合い的な感じね」
牛「まあそうね。どの限度で付き合ってたのかなって」
「距離感、ねぇ」
牛「そう」
「自分とうっしーの距離感…言葉にするのムズいな」
牛「ん？どういう事？」
「少し…難しい………なんというか、自然にできた仲な訳だから言葉で表すのが難しいっていうか…」
牛「はっ、レポートに追われる筈の大学生が言語化出来ないなんて言っちまったら世も末だぞ」
「………」
成程
今、分かった。
俺とAは多分すっごい深い仲なんだな。
「…はは」
牛「ん？どうした」
「なんかうっしー相手にこういう事話すの新鮮でさ」
「本当。アンタはアンタなんだな」
その顔
今にも、この刹那に
消えてしまいそうな。
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作者名：Yとさん。 | 作成日時：2022年11月14日 22時
