視力が望遠鏡 uszw.side ページ22
寒空の下、車椅子の揺れを感じながら風の香りが心地良さを増す。
それにしても陽がフワフワと暖かい。
でも空気は肺を刺すような冷たさ。
少し清々しいような空気。
寒いというのに変わりは無いが、嫌じゃない。
「……あ、そう言えば病院の中庭にカフェぽいのあるらしいよ」
A「カフェ？すげえなこの病院」
「なんかコーヒーとか紅茶とかジュースとかあるって、廊下のポスターっぽいの見た」
A「へぇ〜、どうせなら行ってみる？怪我してるだけだし食の制限は多分無いっしょ」
「多分ね。お昼ご飯食べれるくらいには胃空けとかないとだけど」
A「んじゃ茶でもしばきますか」
「…あ、Aって関西人？」
A「ん？そうよ、関西のジョニーデップとはこのAさんの事だから」
「そんな歳じゃねえだろ」
A「へへ、ピチピチの大学生ですわ」
ほーん、大学生なのか。
通りで童顔な訳だ。
A「さて、噂のカフェでも行きますか」
「北側らしいぞ。温室の横の小屋的なのだって」
A「北ってどっち？」
「……北極ある方？」
A「もしかして自分をマサイ族よりも目の優れた人間と勘違いしてる？」
「視力いくつあったら北極見えんだよ」
A「えっとねぇ、東京から北極まで6,300kmだから視力で換算すると、確か視力1で1キロ先のが認識できんだよ。だから6300視力あれば分かる」
「お前何者だよ」
A「雑学好きな大学生」
「あら博識ぃ」
すげぇなぁ最近の若者。
でも地球丸いから北極見える訳ねえんだよな。
水平線ってすげぇなぁ。
そんな無駄話をしながら俺達は中庭の木々を眺めつつ北へ向かう。
病棟は3つくらいあるんだな。デカい。
途中で棟の渡り廊下を横切った。
忙しない医者達の足取り。
患者さんのお散歩。
病室へ向かう家族の人たち。
家族の人＿
「俺の…母親は、この事知ってる？」
A「ああ、勿論。ガッチさんが対応してくれてさ。お見舞いにもそろそろ来てくれるんじゃないかな。」
「…そっか。実家からわざわざ…来てくれるんか」
A「……記憶の事、多分まだ説明されてないよ」
「そうかぁ、なら別に言わなくても良いかもな」
A「言わねえの？まあまあ重要なことじゃないん」
「あ〜、実況？の事は確かもう知られてたとは思うんだよね。だからその上でも、あんま干渉され過ぎたらごちゃごちゃしそうじゃん」
A「…そっか。佐々木さんがそう言うならそれでええと思う」
少し…Aの足取りが重い。
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 185人がお気に入り
お気に入り作者に追加
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：Yとさん。 | 作成日時：2022年11月14日 22時
