諦 ページ7
「もしかしてアンタはこの地域の人間じゃないのかって思って、100回を越えた辺りから外国にも行ったんだ。アンタっぽい人間に声を掛けて、とっ捕まってヤバい所に売り飛ばされそうになった事もあるらしい。記録に残ってたからな。…記録がぽっかり抜けてる所もあったから、多分そのまま売り飛ばされて…はは、我がことながら想像したくもないぜ」
捕まったその後の自分の事を想像したのだろうか。
彼の手は少し震えていた。
彼の白い頬を伝う涙を指で拭い、震える手を優しく包み込む。
「でも、さ、そんな目にあっても、どうしても…アンタを探し続ける事を諦められなかったんだ。地上に出てもどうせ巻き戻されて地下に引き摺り戻されるってわかってたのに、どう足掻いても地上には居られないってわかってたのにさ」
ひく、ひくと彼がしゃくりあげ始める。
いくら彼の涙を拭っても、彼の涙は一粒が大きくなり、量も増えてしまった。
「ぁ、っ…諦めたく、なかったんだ。アンタに、Aにっ、会うことだけは、諦められなかったんだ…! でも何回探してもアンタに会えなくて、気が狂いそうだった! もしかしたら、あの時俺を助けてくれたアンタは俺の幻覚だったんじゃないのかとすら思い始めちまったんだ。だから、もうやめよう、次探してダメだったらもうやめようって、もう一回探したらやめようって、ずっとそれが続いてたんだ。それで、今回で本当に最後だ、見つからなかったら諦めようって、思ってたんだ、思ってたのに」
ぽすん、彼が私の胸の中に顔を押し付けてくる。
患者服に彼の涙が滲むのがわかった。
「アンタはあの店にいたんだ! あんな、あんな近い所に、そこにいるのが当たり前みたいに、Aがいたんだ! なんで、なんであそこにいるって言ってくれなかったんだよぉ!!」
今まで溜め込んでいた気持ちが抑えきれなくなってしまったのか、彼は私の胸をポカポカと叩きながらわんわんと本格的に泣き始めてしまう。
彼の丸い頬に大粒の涙がいくつも伝っていく。
…確かに彼は今まで何度か私に涙を流す姿を見せて方が、ここまで感情を露わにして泣くのは初めてだった。
それを見ていると、私は堪らない気持ちになり、咄嗟に彼を強く抱き締める。
『ありがとう、ありがとうっ…私を探してくれて、あの時の事を…私の事を、忘れないでいてくれて、…ありがとうっ…』
私も嗚咽をこぼしながら、彼にありったけの感謝の気持ちを伝える。
…直後、彼は更に大声を上げて泣き始めてしまった。
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春朧 - 素晴らしい作品をありがとうございます!!この作品を見つけてから何回も見返して楽しんでます!!これからも応援してます (2022年8月16日 11時) (レス) id: 27ed0134a4 (このIDを非表示/違反報告)
名無し56929号(プロフ) - この作品に出会ってはじめから一気読みしました…一番好きな小説ですありがとうございます… (2022年6月16日 12時) (レス) @page23 id: bb65216783 (このIDを非表示/違反報告)
くろほたる(プロフ) - お陰様で新たな扉が破かれました。お話開く度一喜一憂してしまいます。sansの原作っぽさを再現しつつ違和感皆無に仕上げるの感動しました…!おじさん(主人公)かわカッコでsansもカッコかわなの凄く微笑ましいです悶えます…!!長文失礼しました。おかえりなさい…!! (2022年5月29日 23時) (レス) id: c41e537264 (このIDを非表示/違反報告)
夢川(プロフ) - 黒曜楼乱さん» ただいまですー☺️ (2022年5月17日 23時) (レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
夢川(プロフ) - モブくんさん» えへへ、遅くなってすみません☺️ (2022年5月17日 23時) (レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢川 | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/item/da3d119d46aa3a420b503d00d3fa8e22/1637423635...
作成日時:2021年11月29日 14時