怒 ページ48
『お前は、命を何だと思ってるんだ…この世界はゲームなんかじゃ無い。みんな、みんな生きているんだ。必死に生きて、次の日も…その先の未来でも大切な人の隣で笑えるように、頑張って生きているんだ、生きていたんだ!! そんな尊いものを…お前のそんな下らない価値観で殺されてたまるか!!』
気が付けば私は、ボロボロと涙を流しながら子供に訴えかけていた。
これが夢であったとしても、先程の子供の発言は許せなかった、許したくなかった、許してはいけないと思った。
「はは、めちゃくちゃ皮肉効いてるじゃん、おもしろ。…あー、でも…そろそろお前の相手するのも面倒になってきたから、これで"最後"にするわ」
子供は頭の後ろで組んでいた手をほどき、両手で塵塗れのナイフを握りしめると、真っ赤な瞳で私を睨み口を裂けさせた。
「せいぜい頑張って逃げろよな。NPC」
直後、目にも止まらぬ早さで子供が私、正確にはサンズさん目掛けて突進してくる。
それを上体を捻るようにして避け、踵を返し回廊の出口に向けて走り出す。
今まで一度もこの回廊から抜け出すことはできなかった、出口に辿り着く直前に毎回殺されたからだ。
今回こそは失敗しない、絶対に逃げ切ってやるんだ。
子供の斬撃を避け続け、出口に迫る。
あともう少し、そんな所で。
『っあ!?』
足を何かに取られ、盛大に転んでしまった。
勢いに任せて放り出されたサンズさんが床を転がり、突き当たりの壁にぶつかって止まる。
ふと何かに取られた自分の足を見ると、そこには植物の蔦が絡んでいた。
「ナイスプレイ、親友」
ぽすん、背中に辛いものが乗る感触。
夕日に照らされ、私の背中に馬乗りになった存在がナイフを振り上げる様が、床に影となって写し出された。
『サンズさん、逃げて!!』
床に倒れたまま朦朧とした目でこちらを見つめる彼に必死に訴える。
直後、鋭い痛みと衝撃が背中に何度も走った。
私の悲鳴が回廊に響く。
背中の傷口から溢れる血が、床に大きな水たまりを作っていった。
─逃げて
『逃げて』
─逃げて!
『逃げて!』
─逃げて!!
『逃げて!!』
ナイフの切先が、私の体の中にある大切な器官を貫く感触がし、そこで全ての感覚が途切れた。
視界は暗く、僅かな音しか聞こえない。
誰かが歩く音。
何かを振り上げる音。
風を切る音。
陶器のようなものが割れる音がして。
…………暗転。
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モブくん_通行人A(プロフ) - 夢川さん» めちゃきついですねぇぇ (2021年11月29日 4時) (レス) @page48 id: f25d375883 (このIDを非表示/違反報告)
夢川(プロフ) - モブくん_通行人Aさん» イケおじには肉体的に死ぬ前に精神的に死んでいただきます! 通行人Aさんにはイケおじが壊れていく様を見ていただきたいので、死なないでくださいね! (2021年11月28日 21時) (レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
モブくん_通行人A(プロフ) - オァ…キチィヨォ…早く救急車…イケオジが死んじまう…それより前におれが死んじまう… (2021年11月28日 19時) (レス) @page39 id: f25d375883 (このIDを非表示/違反報告)
夢川(プロフ) - モブくん_通行人Aさん» アッワッアッ…アリガトウゴザイマs…楽しんでイタダケテ何よりでs...頑張って続き書いてイキマs... (2021年11月27日 15時) (レス) id: f5c230c4ae (このIDを非表示/違反報告)
モブくん_通行人A(プロフ) - アッアッアッ好きでs…ムリ…尊…い…楽しく読んでます頑張ってくださ…(絶命) (2021年11月27日 15時) (レス) @page28 id: f25d375883 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:夢川 | 作者ホームページ:http://ulog.u.nosv.org/item/da3d119d46aa3a420b503d00d3fa8e22/1637423635...
作成日時:2021年11月21日 1時