その嘘は一体 ページ34
部屋で本を読んでいると、引き戸が開く。
この聞き慣れた足音は、きっと彼奴のものだ。
『三郎、いる?』
「聞かなくてもわかってるじゃないか」
『まぁね。本読んでるの?』
ひょこっと顔を覗かせたAは、そのまま私の手元にある読みかけの本を覗き込む。
すると、忽ち笑顔になる。
その笑顔に、多少の胸の高鳴りを覚えた。
「雷蔵に勧められた本だが…何かあったか?」
『いや、丁度いいと思って』
そう言って、懐に手を伸ばしたAは、何かを持って私の目の前にそれを出した。
『さっきまでおばちゃんにお使いを頼まれててさ。
そしたら、小物屋の店主に声を掛けられたから買っちゃった。これあげるよ』
それは栞だった。
控えめな薄紫が綺麗な桔梗の。
Aが私にお土産だなんて、明日は雪でも降るんじゃないか。
「…何か企んでるのか?」
『失礼だな、私にもお土産を買ってくる善意の心くらいあるっての』
いらないの?
と、不安げに見つめるその瞳に勝てるわけないので、有難く貰うことにした。
「なんでまた桔梗なんだ?」
『なんとなく』
嘘だ。
でもそれを口にしない代わりに、そうかと一つ返すとAは自分の部屋へと戻って行った。
「…一体あいつは何を隠しているんだ」
早速貰った栞を本に挟んで、勘右衛門と兵助の元へ向かう事にした。
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唯(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (2019年1月20日 15時) (レス) id: b278546180 (このIDを非表示/違反報告)
陽(プロフ) - hina hihoho2さん» ゆっくりしていってね (2018年10月20日 22時) (レス) id: 47a6f04f33 (このIDを非表示/違反報告)
陽(プロフ) - ゆいさん» ありがとうございます!! (2018年10月20日 22時) (レス) id: 47a6f04f33 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - とても面白いです!! (2018年10月17日 12時) (レス) id: d085377e62 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho2(プロフ) - どうもー!ひほほでーす!気になって来てしまった…。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 74a6d1071f (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:陽 | 作成日時:2018年8月13日 22時