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その気持ちには名前があった ページ18

幼い頃を思い出していたら、再び静かな足音が聞こえた。


きっと、左近がお粥を持ってきてくれたのだろう。

お粥を食べやすいよう、起き上がって待つ。



『さ、左近が潮江先輩になった…』


「んなわけないだろう。バカタレ」



引き戸の奥にはどこか優しい顔をした左近。

ではなく、隈を携え疲れきった顔をしている潮江先輩だった。



『どうしたんですか?』


「左近が野村先生に呼ばれたんで、たまたま近くにいた俺が頼まれたんだ」


『それは、ありがとうございます』



潮江先輩はお粥を置くと、そのまま横に座った。

そのまま立ち去ると思っていた私は、不思議な顔をしているだろう。



『あの…』


「ん?」


『戻られないんですか…?』


「お前を叩き直そうと思ってな。風邪を引いただけじゃそんな顔にはならんだろう」



あぁ、私、酷い顔してるのか。
呑気にそんな事を思った。


ゆっくりでいい。話してみろ。


潮江先輩は腕を組んで、じっと私が話し出すのを待っている。

こうして頼らせてくれる先輩は優しいなあ。


私は、ポツリポツリと話し出した。



『前、三郎に寂しがり屋だって言ったんです』



でもそれは、嘘じゃない。実際に私は寂しがり屋で泣き虫だ。


間違ってはいないんだけど、当たってもいない。


私は、三郎に置いて行かれるのが怖かったんだ。

三郎が離れていくのが、怖かったんだ。


忍術学園に入ると聞いた時。

雷蔵の顔を借りた時。

忍術をどんどん身につけていって、実力の差が生まれていった時。


置いていかれると、とても怖くなった。



『今でも、たまに思うんです。この学園を卒業したら、互いに違う道を歩んで行く。

例え同じ村に住めど、距離は出来ていくばかり。

いつか、本当に手が届かなくなるんじゃないかって。


それが、とてつもなく怖いんです』



話し終えて先輩の顔を見ると、どこか驚いたような顔をしていた。


変な話だっただろうか。



「お前、それって」



恐る恐る声に出したらしくない潮江先輩に、反応が遅れる。





「恋、じゃないのか…?」





『…はい?』





.

その戸惑いは隠せない→←その手は届かない



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(プロフ) - とてもおもしろいです。続きが気になります! (2019年1月20日 15時) (レス) id: b278546180 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - hina hihoho2さん» ゆっくりしていってね (2018年10月20日 22時) (レス) id: 47a6f04f33 (このIDを非表示/違反報告)
(プロフ) - ゆいさん» ありがとうございます!! (2018年10月20日 22時) (レス) id: 47a6f04f33 (このIDを非表示/違反報告)
ゆい(プロフ) - とても面白いです!! (2018年10月17日 12時) (レス) id: d085377e62 (このIDを非表示/違反報告)
hina hihoho2(プロフ) - どうもー!ひほほでーす!気になって来てしまった…。 (2018年10月10日 20時) (レス) id: 74a6d1071f (このIDを非表示/違反報告)

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作者名: | 作成日時:2018年8月13日 22時

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