13、ヒールとスカート ページ13
｢やっぱり適度に離れた位置から見る花火が綺麗だと思わないか？降谷？｣
｢はぁ…煩い。1人で喋り続けて、飽きないんですか？｣
盛大なため息と、呆れたような降谷の声が耳に届いた。視線はターゲットから動かさず、私は首を傾げる。
｢え？ひとり…？私は降谷と楽しく話をしているつもりだったが…｣
｢は？僕がいつ会話に加わりました？…貴女と張り込みをすると緊張感がなくて困る｣
確かに、思い返せば私が1人でペラペラと喋り続けていただけだった。
というか。話を振っていたのに、降谷が返事をくれないのが悪いと思うが。
｢緊張感、ねぇ。そう言われてもな……仕事はちゃんとやってるだろうが｣
｢だから余計に腹立たしいんですよ｣
｢お前…腹立たしい、って……っ！｣
｢…っ｣
私が息を飲んだと同時に、降谷も反応する。
舌打ちをしてすぐに走り出した。
｢ターゲットに気づかれた！私はビルの入口へ向かう｣
『了解』
｢車の方の警戒も頼む｣
走りながらインカムへそう告げて、私は屋上からの外階段を全力で駆け下りる。
確か、ビルの裏手にターゲットの車があった…それで逃げられる前に絶対捕まえてやる。
職業柄スカートとヒールで走る事には慣れているが、階段は流石にうっとおしい。
｢あー！くそ！｣
走りながらスカートの裾を破いてスリットを入れる。大きく動かせるようになった足で、スピードを上げながら目的のビルを目指した。
｢…っ！来た｣
私が階段を降りきった直後、ターゲットがビルから出てくる。ナイスタイミングだ。
…足の速さは負けないはず。女だからって舐めるなよ。
｢っ！痛ｯ、……お、りゃ！！｣
背中にタックルをかまし、コンクリートに叩きつけて馬乗りになる。
肩で大きく息をしたところで、男の手にスイッチのような物が見えた。
何？…爆弾、か？最悪の事態を想定して、肝が冷える。
直後、パンと乾いた音が聞こえて。状況を把握する前にソレが男の手を離れ、コンクリートの上を滑った。
私の下にいる男の呻き声でハッと視線を戻すと、手からは血が流れ出ていて。うお…痛そう。
走ってきた降谷が、起爆スイッチらしいそれを拾い上げて銃を仕舞った。
｢……やるな降谷。流石｣
｢それはどうも。｣
すぐに男の両手首を後ろに回し、手錠をかける。…はぁ、走って疲れた。
｢あのスイッチは何だ？｣
｢……｣
｢だんまりか。まぁいい…どうせあの部屋に仕掛けた爆弾だろ｣
｢、…｣
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作者名：re
| 作成日時：2021年4月1日 15時
