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133、バカな子ほど ページ42

「Aを本気でバカだと思った事は、1度もない」
「…そう、なの?」

じゃあ、どうして?首を傾げると、彼はため息をついて私の背後へ視線を移した。

「葵さんに、何か言われましたね?」

私への問いかけのようで、実際は葵くんに向けられたものだろう。
安室さんの視線に釣られて振り返ると、私達を見ていた葵くんは何も言わずに肩を竦めた。


「まぁ…Aは抜けてるところがあるから」

「た、たしかに…」
「あとは行動が幼稚だったり。……そう思った時に『バカ』と口にするのは確かです」

「は、ハイ」

全く否定出来ない。おっしゃる通りで。
やっぱりそのままの意味だよなぁ…

「僕個人の場合、嫌われても構わないと思っている相手には本気で言いますね」
「ひぇ………っ」

零さんに本気で罵倒されたら、わたし。
もう生きていけない……。

「ですが。嫌われたくない人の場合、まず大前提として…相手を心から信頼していること。Aに関しては……本気で " 好きだ " って気持ちが無ければ、そんなこと言いませんよ」

「…ん?」

「あれ?聞こえませんでした?」

涙目だった私が安室さんを見て固まっていると、彼は呆れたような表情をしてから

…ふわりと笑った。

「好きだから」

「すき…?」
「そうだなぁ、あとはなんて言ったらいいか…」

顎に手を当てた安室さんはカウンターから歩き出した。

「勉強は出来るのに…抜けてたり、子供っぽい所が」
「うん…?」

私の目の前でピタリと足を止めた彼は、柔らかな笑みを浮かべてそっと頬を撫でた。

「愛おしくて堪らないから」
「……な、な…?」

なんだって?愛おしい…?
安室さんって、そんなこと言うの…?




「……さて」

真っ赤な顔で口をパクパクする私に笑みを残した後、安室さんは視線を葵くんへ移した。

「葵さんがAに吹き込んだのは、こんな感じで合ってます?」

「…ほ?」

彼の言葉に、私は咄嗟に後ろを向く。
クスクスと笑っていた葵くんは大きく頷いて、両手で大きな丸を作った。

「もちろん、満点です」

えぇえ…?
確かに、葵くんが言った通りだったけど。


「……結局、女性って少し抜けてるくらいが可愛いんですよね。そう思いません?安室さん」

「 " バカな子 " ほど、可愛いからね」

私をじっと見つめながら、腕を組んだ安室さんが答えた。


…って、ちょっと待て。

「なんでこっち見るのさ」



……やっぱり私のこと『バカ』だと思ってるじゃんか。

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作者名:re | 作成日時:2021年2月21日 12時

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