119、取調室のような ページ28
彼の車に一緒に乗り込む。
ハロを連れているため、私は珍しく後部座席へ。
「零さん、お仕事おつかれさま」
「あぁ。ありがとう」
バックミラー越しに後部座席へ座る私を見た彼は優しく微笑んでくれた。
うん?…それで、さっきはなんであんなに怒ってたんでしょ?
けれど、彼が落ち着いている今。わざわざ話題にする必要は無いと判断。
まぁどうせ、嫌でも家でお説教されるだろうし…はぁ。
運転席のシートを後ろから掴んで零さんに近づくと、大好きな彼の匂いがした。
「零さん…会えなくて、すごく寂しかった」
そっと耳元で囁けば彼は優しく笑った。
「……俺も」
「アン!」
私の隣でドライブボックスから顔を覗かせたハロが鳴いて、私と零さんは吹き出した。
「ハロとお散歩中に雨が…」
「あぁ。コナン君から聞いた。それで?」
家に帰って来るなり、尋問開始。
ん?ここって…… 取調室でした?実際は出てこないらしいけど、カツ丼食べたいなぁ。
「はい、それで…雨宿りしてたら偶然2人に会って、コナンくんが提案してくれた形で…昴さんの車に…」
「 " 昴 " さん…?」
「ヒイッ…!…お、 " 沖矢さん " の!車で…っ」
この人、ほんと……どこに地雷があるのか分からない!!私が『昴さん』と言った瞬間に、目の色が変わった。
「零さん…もしかして、名前で呼んでるのが嫌なの?」
「そんなこと今は関係ないだろ」
「い、いひゃい!」
恐る恐る聞くと、彼にほっぺを引っ張られた。
痛みで涙が滲む。くそう、余計なこと言うんじゃなかった…
以前、同級生を呼び捨てしていたら『嫉妬した』って言ってたし。
今回の " 昴さん " 呼びも…電話越しでさえ反応してたくらいだ。今だってわざわざ話を遮って。
あれ?……でも " 葵くん " だけは普通か。うん?零さんってよく分からない。
「A。いいから話の続き」
「は、はい!えーと、それで。新一くんの家に居候してるっていう沖矢さんに…」
「待て。お前、工藤新一を知っているのか?」
「んえ?」
私の言葉を遮るように、彼が声を上げた。
さっきから零さんのせいで話が進まない気がするよ?
「知ってるっていうか、お互い顔見知り程度だよ?…家に行ったのも今回が初めてだし。蘭ちゃんと一緒にポアロへ来てる新一くんに何度も会ってるから、私」
「あぁ…俺が働く前からポアロの常連だったな。Aは。」
1人納得した様子の彼はため息をついた。
『それで?』と続きを促される。はいはい、続きね。
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作者名:re | 作成日時:2021年2月21日 12時