115、突然の雨と ページ24
ーー
11月に入り、すっかり秋めいたこの頃。
冬の気配も近づき始めて、私はパーカーのチャックを首まで上げた。
泊まりがけの仕事で暫く零さんが帰ってこられないので、数日間私の家でハロを預かることになった。零さんに会えなくてとても寂しいけど、自分の家にハロが居るのは……なんだか
嬉しい!
「ハロ〜お散歩気持ちいいね!」
「アン!」
零さんの家の周りを歩けない私がハロとお散歩をするのは、今回が初めてだった。
初日は、とにかく走って行こうとするハロを躾けるのに奮闘。けれど賢い子なので、すぐに私相手でも慣れてくれた。
いつもは零さんだけがハロのお散歩に行くから、一緒にいきたいなぁ……と玄関でひとり寂しく見送っていた私が、やっと報われた。
「いつか3人でお散歩したいねぇ」
小さく呟けば、ハロが私を見上げて『アン!』と鳴いた。
明日には零さんが帰ってくるから、また暫くお散歩できなくなっちゃうなぁ。なんて少しの寂しさを感じながら、ハロと一緒に走りだした。
「うぇえ……天気予報だと1日晴れだったのに」
つい数分前までの晴天とは一変。
本屋さんの駐車場のコンクリートに打ち付ける大粒の雨に、ため息を零した。
ポツポツと雨が降ってきた瞬間、ハロをパーカーの中へ入れたため、この子はそれ程濡れていない様子。良かったぁ。
雨を凌げる場所を探すうちどんどん雨足は強まり……私はずぶ濡れになってしまったけれど。ハロが濡れなければオールOK。
ゲリラ豪雨とでも言ったらいいのか。
周囲の音すら掻き消す程の雨量に、私は顔を顰めた。
「ハロ、風邪引いちゃったらどうしよう」
そんなことになれば、零さんに合わせる顔がない。早く帰って、ハロを乾かしてあげないと。
この本屋さんの軒先にずっといる訳にも……かと言って、ずぶ濡れじゃあお店に入るのも迷惑だし……雨が止まない事には、どうしようもない。
参った。
「ハロ、ごめんね…寒くない?」
「アン!」
運動のついでに…なんて、こんなに遠くまで来るんじゃなかった。
本日何度目かのため息を零した直後
「あれ?Aおねえさん?……って、ずぶ濡れだよ!?」
「ん?」
丁度今、本屋さんから出てきた人が声をかけてきたらしい。真っ黒な雲に覆われた空を仰いでいた私は、すぐに視線を移す。
あれま……また出先で会ったねぇ。
「コナンくん……と?」
一緒にいたのは、蘭ちゃんでも少年探偵団でもなく。
1人の男性だった。……それでまたこの人も顔がいいな!
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作者名:re | 作成日時:2021年2月21日 12時