冷たい店員さんと私の関係 3 (ページ21)

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112、安室さんと風見さんページ21

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｢貴女は……Aさん？｣

大学が終わって、いつも通りポアロへ向かう道すがら。今日は安室さんがいる日だし、ハムサンドとケーキ食べちゃおうかな～なんて浮かれながら歩いていた私。
少し驚いたような、遠慮がちな声が唐突に聞こえて振り返る。

｢ん？………あっ！風見、さん？｣

零さんの仕事仲間である、風見さん(恐らく)に出会ってしまいました。

お互いに顔を知っているとはいえ、会ったのは1度だけ。会話らしい会話もしていないから、ほぼ初対面みたいなものだ。
零さんを経由しての呼び名は一応分かるが、彼は私の名字を知らないし、逆に私は彼の名前を知らない。

｢お久しぶりです。その節はお騒がせしてしまって…本当にすみませんでした。お仕事中ですか？風見さん｣
｢あぁ、いえ…仕事へ戻る前に軽食でも取ろうかと。……Aさんは？｣

こんな所で、何を？なんてニュアンスの質問。単純に私の質問を反芻しただけ？
それとも『降谷零』という上司の " 彼女 " への興味本位で、私へ探りをいれるためなのか。

『大学終わりで、ポアロへ行くんです』。普通の知り合いであればこの答えでいいのだけど。

……うーむ。
零さんのいないこの状況で、私は目の前の彼に一体どこまでの情報を与えてもいいのだろう？

この答えは上手く切り抜けたとしても、世間話程度に何か質問されたら。
大学生だと伝えていいのか？適当に｢社会人です｣とか…？いやいや、嘘つくのは流石になぁ……
年齢は？ありのままを伝えていいの？

……もう！！分からない…分からないよ零さん！

頭の中では纏まらない考えがグルグルと巡るが、変わらず笑みは浮かべたまま……とにかく冷静に。

｢わたし、今からポアロへ行くところなんです。これからお食事でしたら……風見さんも、ご一緒にいかがですか？｣

ーもちろん、問題がなければ…で結構ですが。

なんて小声で付け加えて。

｢いらっしゃいま………｣

お客さんが誰も居ないことを確認してからポアロの扉を開けば、一瞬キラキラ笑顔を浮かべた安室さんがこちらへ挨拶をしかけて……

急に真顔になった。

｢……風見？何してる｣
｢あ、あむろさん！私が強引に連れてきたの！ごめん！｣
｢A……｣

｢安室さん！やっぱりまずかったら今すぐ帰ります！！から！｣

本当にごめんって！！だからそんな冷えきった瞳で見ないで！！