105、悪い虫 ページ14
「ねぇ、零さん?」
「なんだ」
彼の家に帰ってきた後、私は胸元のネックレスをきゅっと握って彼を呼ぶ。
コーヒーを飲みながらソファーに座っている零さんが、隣をポンポンと手で叩いて『座れ』と合図をするので素直に従った。私は犬か。
カップを机に置いた彼は私の方を向いて微笑む。そして優しく髪を梳き始めた……はぁ、好きです。
「ねぇ、私にネックレスをプレゼントしてくれたのも、普段から付けろっていったのも…あれが目的なの?それとも偶然?」
昼間のポアロでの一件を思い返しながら問いかける。『束縛したい』だの『永遠に離さない』だの…他の男性にみせつけるため、だの。
零さんは本当にそんな事を考えていたのだろうか?いつも余裕のある彼からは全く想像が出来なくて……つい、聞いてみたくなった。
「……ネックレス、お気に召しませんでした?お姫様?」
「何よりもお気に入りです!!」
「ならいいだろ」
クスクスと楽しそうに笑った零さん。
…う、はぐらかしてるのか?
別に意味がどうとか関係なく、彼が私のためにプレゼントを選んでくれた事実がただただ嬉しいから……正直、何だって構わないんだ。
やっぱり、零さんに限ってそんな迷信めいたことに肖ったりはしないよなぁ…なんて思いながら青い瞳をじっと見つめていたら、彼が困ったように肩を竦めて息をついた。
「意味は元々知ってた。まぁ、プレゼントを選ぶ上ではそこまで深く考えなかったけどな……お前を " 永遠に離さない " なんて、今更だし」
「……」
私、零さんに一生離してもらえないらしい。
そんなの……望むところだー!私だって離れてやらないんだから!
彼は、『そもそも』と呟きながら私の胸元に視線を動かした。
「俺が、その " 意味 " を…こんな物に頼ると思ったか?」
「…っ、うぇ…零さ…」
昼間されたみたいに、ネックレスを人差し指に引っ掛けて少しだけ彼の方へ引き寄せられる。
そのまま唇が重なって、私は反射的に目を瞑った。
ゆっくりと唇が離れて、真っ赤な顔で呆然と彼を見つめていたらクスッと笑いを零して頬を撫でられる。
「それと…普段から付けろと言ったのは」
「うん?」
「 " 虫除け " くらいになればいいと思って」
「むしよけ?」
首を傾げながら聞くと、零さんはニヤリと笑みを浮かべて頷いた。
「あぁ。…安室透みたいな、悪い虫」
……自分のことを『悪い虫』なんて、よく言うなこの人。
ジト目で見つめると、吹き出した彼が私の額を軽く弾いた。
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作者名:re | 作成日時:2021年2月21日 12時