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102、彼のいない夜 ページ11

ーー

「ハロ〜〜あのね、零さんまだ帰ってこられないって…」

スマホの画面に表示された短い文章を見つめていた私は、小さく息をつきながらそれを机に置いた。
私の言葉を聞いて『クゥン…』と寂しそうに鳴いたハロを抱き上げて、ベッドへと向かう。

私が悲しんでいることを分かっているのだろう。慰めるようにペロペロと頬を舐めてくれて……うぅ、はろぉ…貴方は優しいね。

「はぁ、寂しいねぇ……ハロがいて本当によかったよう」
「アン!」

昨日からずっと警察庁に篭もりっぱなしらしい零さんから " 帰れそう " だと連絡があったお昼過ぎ。
私はいつも通り閉店までポアロで勉強(もちろん、死ぬ気で)した後、ここへ来た。

参考書を開いて思案に耽り、たまにハロをもふもふ。……そんなふうに過ごしていたけれど、なかなか彼は帰ってこなかった。


そしてあと10分程で日付が変わる今、彼から届いたメッセージ。

" ごめん、まだ帰れそうにない。先に寝て " 。


「……ねぇハロ、私と一緒に寝てくれる?」
「アンアン!」
「はろぉ〜!…ありがと。大好きだぞ〜!」

ハロと一緒にベッドへ潜り込む。
彼が隣にいないここは、いつもよりやけに広く感じて。少し冷たくて……なんだか寂しかった。

「おやすみ、ハロ」


ハロの温もりだけを感じながら、目を閉じる。零さんが隣にいる時のように一瞬で眠りに落ちることはなかった。
瞼を閉じた真っ暗な視界の中、ただ彼のことを想った。……今ごろ、忙しくしているのだろう。
身体を大切にしてね、零さん。

…あいたいな。

そして私はゆっくりと意識を手放した。









「…A」

大好きな零さんが私を呼ぶ声が聞こえる。
その直後、瞼に柔らかい感触。

「……ん、?」
「おはよう、A」

「ぁ、れ…さん?」

重たい瞼を開いてぱちぱちと瞬きをすると、少しずつ意識が覚醒していく。
目の前には、サイドランプの灯りに照らされた零さんがいた。

「零さん…おかえりなさい。帰って、これたの?」
「あぁ、なんとか。……と言っても4時過ぎだけど」

ー起こしてごめん。

そう呟いた零さんは、私の唇にそっとキスをした。
嬉しくて頬が緩む。私の隣で寝ていたはずのハロは、既に零さんの腕の中で尻尾をブンブン振っていた。

……もう、かわいいねぇ。うんうん嬉しいよね、分かる。

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作者名:re | 作成日時:2021年2月21日 12時

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