素直な君との攻防戦2【降谷零】

68、最終話 ページ26

｢へ…ふ、降谷、かお…真っ赤…？耳も…｣

｢…煩い｣

私から顔を隠すように、ぎゅっと強く身体を抱きしめられて心臓がバクバク音を立てる。

降谷の匂い、体温、息遣い…私じゃ振りほどけない、強い力。
どれも頭がパンクしそうなくらいに、胸がいっぱいで…


｢ずっと、Aに素直になりたかった｣
｢…｣

｢素直に…『可愛い』って、『好きだ』って…言いたかった｣
｢…っ｣

｢散々、冷たい態度を取ってごめん。…傷つけて…ごめん｣
｢あ、謝らないで…｣


私がそう呟くと、彼は『うん』と頷いて軽く息を吐く。



｢ありがとう。僕を好きになってくれて…｣
｢降谷…｣

｢Aの気持ちを伝えてくれて、ありがとう｣
｢…ん｣


『ありがとう』が、本当に嬉しくて。
胸が締め付けられるくらい、幸せで。


彼にぎゅっとしがみつくと、優しく髪を撫でてくれた。



｢好きだよ。Aのことが…誰よりも｣


嬉しくて、涙を零しながら何度も頷く。

…嬉しい。嬉しいよ。


身体を離した降谷が私の頬を包んで顔を近づけるから

私はそっと目を閉じた。





君を好きになって…



本当に、良かった。














ーー

人と人との出会いって、不思議なものだ。


もし、私が合コンの誘いを断っていたら…

もし、隣に座った降谷に声をかけなかったら。


もし……降谷への気持ちを隠し続けていたら。
諦めて、恋心を消してしまっていたら。



選択が1つ違えば、今の幸せは無かったかもしれない。
そう考えたら、" 降谷 " の笑顔を見られたことが奇跡のように思えた。



『ずっと僕のそばにいて』。


勿論、と頷いた私と降谷は額を合わせて

クスクスと笑った。










『素直な君との攻防戦』 END

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