素直な君との攻防戦2【降谷零】

50、不器用な僕 ページ8

ただ異性と友達だっただけで… " 恋愛脳 " の女子に傷つけられる経験をしてきたA。



大学生活…なんて、勉強にも遊びにも一番時間を使える有意義なもののはずなのに。

……友人との思い出が無い、4年と数ヶ月。

知るはずもない彼女の過去に思いを馳せれば、自然と身体に力が入っていく。


｢…降谷？どした？｣

黙って外を眺めていたら、心配そうな表情で僕の肩を叩く彼女に、小さく笑いを零して。


｢……いや？何でもない。怒られる前にさっさと帰るぞ。ノロマ｣
｢あ！ちょ…待って！置いてくなパツキン！！｣



これまで辛い思いをしてきたこいつに。そして、友達でいられる " 今が幸せ " だと言うAに…


｢仕方ないからコーヒー買ってやる。頬は保冷剤で冷やせよ｣
｢降谷ｻﾝ！！ありがとうございます！！｣
｢うるさい｣


『お前のことが好きになった』なんて、言えるわけが無いな。










｢えー！なになに降谷ちゃん！Aちゃんと俺らで居酒屋？！行くいくー！！｣
｢うるせぇハギ｣

｢え〜？じんぺーちゃんは行かないの？｣

｢……んなこと言ってねぇだろ｣
｢じんぺーちゃんも行くって〜｣



恋を自覚した日に、その気持ちを自分の中だけで留めておくことを決めた僕。

だったら恋心なんて無くしてしまったほうが楽なのは分かりきっているんだが…

だからと言って、Aへの想いを所謂 " 友愛 " に切り替えられるほど、僕は器用な人間ではなかったようだ。



彼女を好きな気持ちは、一緒にいる時間を重ねる毎に大きくなっていった。

ここから7年間にも及ぶ片想いが始まる…なんて、流石に予想できないだろ。…我ながら馬鹿らしい。



｢まって萩原！！あの…今回は合コンじゃないけど……いいの？｣
｢ん？Aちゃんがいるんでしょ？｣

｢うん｣
｢じゃあ、それで十分！楽しみだねぇ〜早く休みにならねぇかな〜｣
｢…ん。わたしも楽しみ…｣

｢Aちゃんかーわい〜！｣
｢うるせー萩原！！あと近い！！｣

｢2人ともうるせぇよ｣

｢…めんご｣｢じんぺーちゃん拗ねてんの？｣
｢ぶっ飛ばすぞ｣


僕達が集まれば、いつも大体こんな感じで…
騒がしいったら無い。

｢3人とも元気だな｣
｢そうだな｣


僕にはもう1つ、Aに好意を伝えられない理由があった。





｢ねぇ萩原｣
｢ん〜？｣
｢これ食べたい｣
｢よっしゃ。半分こする？｣
｢うん｣


恐らく、2人の波長が合うのだろう。
萩原と一緒にいる時のAが1番自然体に見えた。

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