素直な君との攻防戦2【降谷零】

61、諸伏の言葉 ページ19

『本当はゼロの方を焚き付けたいんだけど……ゼロはゼロで、告白できない理由が何かありそうなんだ。…どうしても聞き出せなかったけど』


｢……本気で私が好きなら…告白出来ない理由、なんてある…？｣


夜中の諸伏の言葉を思い出しながら、ひとり部屋の中で呟く。


警察学校時代から安室透に出会うまでを思い返しても、私は降谷と違って『好きじゃない』的な発言はしていない筈だし…

まぁ、好きだってバレないように、言動には気をつけてたけど。
それはあくまで " 他の同期達との差を付けない " 程度。

降谷が7年間も気持ちを伝えられない理由にはならない気が…

って、親友の諸伏にも分からないんだ。
だったら私が考えた所で答えが出るわけもない、と諦めて息をつく。



｢…｣

早朝に警視庁を出て、無事に帰宅。ちゃんと食事も取ったし、降谷のタンブラーも洗った。

太陽は高く昇ってお出かけ日和…だけど、お風呂も済ませて、寝る支度は完璧。
あとは疲れきった身体をベッドに沈めて、泥のように眠るだけ……

大きな欠伸をして、ぼんやりとリビングを見渡す。


ここに松田と萩原がいるのは、よく見る光景で。
なんなら " 日常 " と言っても不思議ではないくらいに、あいつらは私の部屋によく馴染んでいた。


楽しそうに笑う声も…私に気を使ってベランダでタバコを吸う、2人の後ろ姿も。
服に染み付く、タバコの匂いも。

萩原の優しい微笑みと、頭を撫でてくれる大きな手の感覚だって…

簡単に思い出せる。


自分以外、誰もいないこの空間に…切なさを感じながらスマホを手に取る。


ー 萩原に連絡しとく。ありがとね


松田に返信をして、そのまま寝室へと向かう。
萩原のトーク画面を開いて…ベッドに倒れ込んだ。


指を動かす事さえ億劫、だけど


｢…萩原…あした、ちょっと…時間、ある…？｣

小さく声に出しながら、メッセージを打って…心が揺らぐ前に送信。

スマホをベッドへ放り出すと、そのまま目を閉じる。



『…なぁ、A。俺からの頼み、聞いてくれるか？』

閉じた瞼の裏に浮かんだのは、寂しそうな諸伏の顔。

あんな顔されたら…


｢ずるいなぁ。…断れないじゃん…ね｣



『ずっとAのことしか見ていない…一途な俺の親友に、Aの素直な気持ちを伝えてやって欲しい』


告白しろ、ってことでしょ？


『もちろん、Aの心が落ち着いてから。ゆっくりでいい。時間がかかってもいい』

｢……｣


『絶対に。2人で、幸せになって』。

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