素直な君との攻防戦【降谷零】

8、水族館好きの降谷サン ページ8

｢何度も言ってるけど、わたしいい加減仕事戻るんだってば…｣

｢さっき『水族館行きたかった』って言っただろ！｣

｢へ？言ったっけ？……正直、君の危険運転中は怖すぎて…適当に口が動いてたんで！！何喋ったかほとんど覚えてないっす。へへ…｣


ヘラヘラと笑えば、引き攣った笑顔のトオルクンに頬を思いっきり引っ張られた。

いっってぇよ！！！ちょっとは手加減しろ！


｢っ、この怪力！！馬鹿力！！！ばか！！｣

｢うるさい。僕がお前より馬鹿な訳ないだろ｣
｢それはそう｣


ほんと嫌味なヤツめ。

涙目になりつつ、お返しにほっぺを抓ってやろうとしたら簡単に阻止されて暴れたくなった。

もう……怒るのも馬鹿らしいな。



｢はぁ……じゃなくてさ。もし水族館行くにしても、私が " 君のセーフハウス " なんて重要な場所で休む必要はないよね？…あ。トオルクン、トオルクン？公安の方がお呼びみたいですよ｣

ペラペラと喋っているうちに、車の外で降谷の部下(多分)が声をかけたそうにしているのに気がついた。

あの人、数回見たことがある。確か…… " 風見さん " 。


メガネの彼へ軽く会釈しながら、わざと " トオルクン " と強調して呼んでみれば、眉間に皺を寄せた降谷に舌打ちをかまされた。

……余程名前で呼ばれたくないらしい。偽名だから別にいいだろ。


今この時。何がなんでも " トオルクン " 呼びを貫いてやると心に決めた。

そう、私は意地が悪いんだ。わはは！！


｢風見さん待ってるよ。早く行きなさい｣

｢お前。絶対ここにいろよ。｣
｢へ？｣
｢僕が戻るまで勝手に車から出るな。分かったな｣
｢わたしは子供か｣


私をジト目で睨みつける降谷に『はいはい、分かったから。早く行って』と適当に返事をして、足元のスマホを拾う。


…年上部下を持つなんてすごいな、あいつ。
車を降りた金髪の後ろ姿を眺めながら、つい大きな欠伸が出た。
気持ち悪くてねむい。

｢ふぁ………。…降谷、そんなに水族館行きたいのかぁ……魚好きなのかな。なんか意外だ｣


『はぁ？違ぇだろ。お前、ホント相変わらずだな』

｢…………へ？｣
『" お前ら " か。めんどくせぇ』

独り言に返事が来て、思わず面食らう。

…あ、そっか。すっかり忘れていたけれど、萩原との通話がまだ繋がったままのようで。

スマホから松田の声が聞こえて一瞬フリーズした。



……いやいや、盗み聞きしてないで切ってくれよ。

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