素直な君との攻防戦【降谷零】

35、君の言葉一つで ページ35

爆弾の解体は終了。建物等の被害、怪我人共にゼロ。
犯人をすぐに捕まえる(気がある)かは不明のまま、この後の捜査は全て公安へ移るんだろう。


｢あいつどこ行ったんだろうな｣

｢え？Aちゃん知らないの？｣
｢ん。目暮警部に連絡してるうちに居なくなってたからね｣


私のセリフにドン引きする2人。うん、わかる。

どうせ公安として動いてるんだろうけど…ワーカホリックというか、なんというか。


結局、水族館まで来たのにご飯食べただけの休日…もー！イルカショーくらい見たかった！

防犯カメラに映っているはずの、降谷との関係を美和子達に問われるのも面倒だし…


｢帰る。じゃあね｣
｢あ、ちょっと！Aちゃん｣

2人に手を振って横を通り過ぎ

…ようとしたのに。


｢っ、…待て待て｣
｢…｣
｢なんでそんな顔してんの？｣

手首を掴まれて立ち止まる。
萩原が目線を合わせるように屈んで、私の顔を覗き込んだ。
そっぽを向こうとしたら頬を包まれて絡む視線

｢萩原…｣

｢折角オシャレしてるのにさ〜。勿体ないよ？可愛い顔が台無しじゃん。デートなんだから…｣
｢デートじゃない｣
｢いや、デートでしょ｣

涙が浮かびそうになって、唇を噛んだ。


｢…あいつにとってはデートじゃなかったもん｣
｢事件が起きたから？そんなのただの偶然…｣
｢偶然、なのかな｣

萩原の言葉を遮るように呟いてしまって、余計に嫌悪感…
悩んだって仕方ないのに。ホント面倒臭い女。

小さく笑いながら、萩原の手をそっと退ける。


｢ごめんごめん、何でもない！帰るね。…あ、萩原｣
｢ん？｣

｢また、家に遊びに来てよ。松田も｣

優しい笑顔で頷いた萩原と、何だか複雑そうな表情で『おう』と返事をした松田。

もう一度2人に手を振って、今度こそ歩き出した。











｢A｣

電車で帰るか〜と水族館を出た直後。
路肩に停車中の見慣れた車から降りてきた男に名前を呼ばれて…

｢先程はどうも。…じゃあ、また｣
｢ストップ！｣

頭を下げて通り過ぎようとしたら捕まった。くそ。


｢君、仕事は？まだ捜査続いてるけど…｣
｢あれは僕の担当ではないので。それより、この後行きたいところは？｣

｢水族館はあんな状態だし、もう別に…｣

｢じゃあ別の水族館に行きましょう｣
｢へ？…え？いや！｣
｢時間が勿体ない。早く行きますよ。折角のデートなんですから。…ね？｣


｢今日、デート…なの？｣
｢勿論｣

ふぅん。




……そっか。





ちょっと嬉しい。

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