素直な君との攻防戦【降谷零】

31、噂の人達 ページ31

｢っ、ぅ！へｯくし…ｯ！｣


｢お前…おっさんみたいなくしゃみだな｣
｢ぅおーい！失礼な！降谷に言われたくな……っへ、くしゅ！！！｣

｢噂でもされてるんじゃないか？しかも2回だから " 笑いのネタ " 。｣


バカにしたように鼻で笑った降谷の頭を叩く。
運転中の彼に逃げ場など無く、クリーンヒットしてちょっと気持ちが良かった。


｢わはは｣

｢バカ！運転中の相手を本気で叩く奴がいるか。危ないだろ｣
｢君がこの程度でハンドリングミスるわけないでしょ｣
｢……評価して頂いてどうも。全く…｣


本気で呆れたようなため息をつく降谷にケラケラと笑って、窓の外へと視線を移す。


雲ひとつない晴天…いい天気。お出かけ日和だね。

こいつと一緒なのが不思議な感じだけど…


｢大体さぁ、くしゃみしたくらいで " 噂噂 " って言うけど…じゃあ鼻炎の人はどんだけ噂されてるのよ、っていつも思うんだよね｣

｢はぁ？普通はそこ気にしないだろ…っ、くしゅ…｣

｢わはは！降谷も噂されてる｣
｢うるさい｣
｢…にゅ、む゛｣

前方から視線を逸らさないまま、的確に頬を押し潰された。…ノールックかよ。

いてぇ。





さて。
今朝はいきなり寝坊からのスタートでしたが、現在場所を移して降谷の車内。

目的地は水族館…らしい。昨日ごちゃごちゃ言ってた " デート " の有言実行なのか、何なのか…

多忙を極める公安様にとっては貴重な休みなんだから、ゆっくり休めばいいのにとつくづく思う訳で。


なんて。

……ホントは会えて嬉しいけど。内緒。


｢分かっているとは思うが、車から降りたら絶対に " 安室透 " として接しろよ｣

｢はいはい。仰せのままに…トオルクン？｣
｢…｣
｢睨むな｣

君、どうして偽名で呼ぶと機嫌悪いわけ？

…意味わからん。









｢ねぇ｣
｢はい？｣

水族館に着いたのは、丁度お昼頃で。
世間的に休日であることも相まって人で溢れていた。


先にフードコートへ来た私達は、何とか見つけた小さなテーブルの2人席で軽く食事を取る事に。
周囲がガヤガヤと騒がしいから、かなり近づかないと声が聞き取りにくい…ってマジでデートみたいだな、これ。


｢昨日さ。トオルクンの車に乗ってる途中から、君の部屋で起きる前までの記憶が何もない｣

｢あぁ。貴女、僕の車の中でヨダレ垂らしながら思いっきり寝てましたからね｣
｢………｣

よ、？！…マジ？
仮にも好きな男の前で…

｢え、……や、そ…っ、う、う嘘…｣
｢嘘ですよ｣
｢おい｣

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