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9、出会いの日 ページ9

ーー

大学の授業おわり。自分の家に帰るような自然さでポアロに通い詰めている私は、ただいま例の鬼店員を観察中である。

梓さん曰く、『彼が冷たくするには何か理由がある』。
笑顔で接客する安室さんをこっそり眺めつつ(もちろん、他のお客さんに対しての接客だ)、初めて彼に出会った時の事を思い返していた。

「……」
そういえば、初っ端はあの素敵スマイルで迎えてくれたんだよなぁ。態度が変わったのは…なんだっけ?
あぁ、そうだ、私が一言喋った後だ。

確か。

『憧れの人にそっくりだ』とか、なんとか。そんな事言った気がする。

その後にはもう、私にとってすっかり見慣れた安室さんの表情に変わってた。うーん、そんなに嫌だった?

……でも、それだけでこんなに態度が変わるか?と問われれば疑問が残る。
実際、JK達に猛アピールされても笑顔でサラリとかわすスキルを持っている程の彼だ。


「う〜〜ん?」

これに関しては考えても埒があきそうにないので、一旦保留することに決めた。無理、お手上げ。



話を少しばかり戻して。
安室さんは、そっくりというか、もはや瓜二つなんだ……お兄ちゃんに。
正直に言えば、同一人物ではないかと何度も疑いたくなる程。

でもなぁ、彼と最後に会ったのはもう7年も前だし……そもそも、彼は警察官のはずだし。
というか、名前全然ちがうし。

彼に超嫌われている手前、突っ込んだ話もできなくて。今まで(いやいや、さすがに違うだろ!)と自分に言い聞かせて考えないようにしてきたけれど。


「ん〜〜〜〜?」
「何してる」

腕を組んで目を瞑りながら唸っていると、急に彼の声が聞こえてパチリと瞼を開ける。
注文した料理を持ってきた彼は、呆れたような顔で私を見ていた。

「瞑想中」
「はぁ」

……やっぱり、似てると思うんだよなぁ。そもそも、日本人でこんな容姿の人がいること自体珍しい。ミルクティーのような明るい髪、褐色の肌、青い瞳。しかもイケメン。

「……ドッペルゲンガー?」
「何言ってるんだ」

んなわけない、と首を大きく振って息をつく。

「ねぇ、安室さんって…」

『 あ、と、で。』

そっくりな親戚とかいる?って聞こうとしたけれど、彼が口の動きだけでそう伝えてきたからすぐに黙る。

OK、分かった。…後でね。あとで。
恐らく、他のお客さんがいなくなった時のことだろう。
うんうん、と頷いた私を見た彼は、ため息を零してからカウンターへと戻って行った。


「……ため息つくことないじゃん?」

10、お兄ちゃん→←8、美人店員梓さん



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作者名:re | 作成日時:2021年1月27日 18時

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