冷たい店員さんと私の関係

43、忘れた頃に ページ43

｢そういえば｣
｢む？｣

食後に安室さんお手製のケーキに夢中になっていると、梓さんが突然思い出したように声を上げた。
ちなみに、まだお客さんは私1人だけだ。
人気のお店を独り占めしていると思うと、なんだか優越感……

｢恋のお悩みはどうなったの？｣
｢……うぇ？｣

口元へ運ぼうとしていたケーキがボトッとお皿に落ちた。情けなく口を開いたまま、暫く固まる。

な、なな何でこのタイミング……？

『今じゃないとゆっくりお話できないから！』なんて彼女は言った。
まぁ、うん……それは確かに。

｢前に男の子連れてきてたけど……好きなの、あの人じゃないよね？｣
｢そりゃあもう！あんな不真面目な男、絶対無いです｣
｢Aちゃん、すごく嫌そうな顔してたもん｣

あ、やっぱりそうでしたか。
その時の私の顔を思い出したのか、梓さんは可笑しそうに笑っていた。

やっぱりこの人恋バナ大好きかぁ……。以前の失言を悔やんだ。くそぅ、あの時うっかり梓さんに聞かれなければこんな事には…。

後悔先に立たず。

｢最近、すごく綺麗になったし。進展あったのかな〜って！｣

ー安室さんも気になりません？

梓さんは最後に爆弾を落とした。
その瞬間私の手からフォークが滑り、店内にカシャンという音が響く。

｢あ、ああずささん…｣

｢女の子は恋愛をすると綺麗になるのよね｣

完全に楽しんでいる彼女はニヤニヤと笑って、私に新しいフォークを渡しながらそう言った。
安室さんに視線を移すと、真顔だった彼が突然優しく笑う。

あ、あむ…っ、安室さんの笑顔！！正面で見られるなんてレアだ…

｢どう思います？安室さん｣
｢そうですねぇ……｣
｢っ！答えなくていいから！！｣

なんだこの状況。
お願いだから何も言わないでくれ。

彼は少し考えるフリをした後、私の方を向いてまたふわりと笑った。


｢Aは、元からすごく綺麗ですよ｣



｢……あ、あむ、ろさん……？頭でも打った？｣

｢あれ？！Aちゃんに対して安室さんが冷たくない！｣

な、？……いきなりどうしました？

恥ずかしいとか、嬉しいとか、やめてとか。そんな感情の前に……ただただ唖然とする。一体、どなたでしょうか？
梓さんも驚いているようで、目をぱちくりしている。

そんな私たちの様子を見た彼は、腕を組んで深いため息をついた。

｢……別に、頭は打ってない｣
｢あれ？元に戻った｣

これは、いつもの安室さん？……なのか？

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