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5、世話焼きな鬼 ページ5

ーー

「う〜〜む?」
「ここが違う。やり直し」
「うえ〜」

先日危うく出禁になるところだった最強の勉強スポット、『喫茶店ポアロ』をなんとか死守することに成功した私。

おいしいコーヒーを飲みながら、美男美女の働くこの空間で勉強できるのはやはり最高である。


……が。
あの日以来、以前までとは少々状況が変わり始めた。

お客さんが減った時に私が参考書を広げるまでは、同じ流れ。

「……安室さん、もうつかれちゃったよ〜」
「そんなんで警察官になれると思ってるのかバカ」

お客さんが誰もいなくなった時に限り、超スパルタな安室さんの指導付きに変更。

とってもお得だし、なんとも有難いのだが。この人。控えめに言っても鬼である。



「むむむ……」

大学3年の春。警察官になりたい私は公務員試験の勉強をしていた。
この、安室透という男。鬼ではあるが教え方がめちゃくちゃ上手い。
正直に言うとありえない程助かってます……本当にありがとう……。

これからも通い詰めてたくさん注文するので、少しばかりではありますが売上に貢献させてください。感謝。


「………」
私と彼しかいない店内に響くのは、ペンがノートの上を滑る音。参考書を捲る、紙の音。
時折グラスの中でカランと音を立てる、氷の音。

そして、向かいに座る彼の声。(大体怒ってるけど)

うーん、やっぱり。
……天国か、ここは。





ーー

「A」
「ふぁい!」

突然名前を呼ばれて、反射的に顔を上げる。
アイスティーを机に置いた彼が、じっと見つめていた。

……本当、イケメンさんだなぁ。なんで私だけ、この人の笑顔を正面から拝むことが出来ないのだろう。世の中って残酷。

「そろそろ休憩しろ」
「ありがとう…」

態度がめちゃくちゃ冷たいくせに、なんだかんだ……世話焼きだし、優しいんだよね。


アイスティーを受けとって、1口飲む。
「あまくないよ〜〜」

なんて零すと、突然意地悪そうに口角を上げた彼が隣の机からガムシロを数個まとめてつかんだ。

うわっ、やばい!怒らせてしまった!

「1個で十分ですよ〜!?」
「うるさい」


結局、私は激甘の紅茶を飲む羽目になったんですが。


疲れは取れたので結果オーライ。

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作者名:re | 作成日時:2021年1月27日 18時

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