冷たい店員さんと私の関係 (ページ40)

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40、あの冷たさが恋しいページ40

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｢おぅふ......｣

顔を上げると、いつの間にか賑やかな店内になっていて思わず声が漏れた。

夏休みに入ってからというもの、お客さんが溢れるようになった喫茶店ポアロ。……主に女子学生。
人気があるって、喫茶店としてはいい事だ。ポアロが有名になるのは常連として素直に嬉しい！そうです、いい所なんだよここは！！

大盛況の原因は、長期休みと……お察しの通り安室さん。と、もう1つ。

新作のケーキだった。

今も、ドアベルが鳴ると同時に可愛らしい声が聞こえてきた。JK軍団到来。

｢あ、あわわわ｣
人数が多い。やばいやばい。私はすぐに勉強道具を片付け始める。
今までは席に空きがあったけれど、彼女たちが座ったらだいぶ余裕が無くなる。勉強なんかしていたら迷惑だ。

アイスティーを飲み干して、席を立った。

｢梓さん、ごちそうさまでした！｣
｢Aちゃん！｣

カウンターにいた梓さんに声をかけると、すぐにレジまで来てくれた。

｢バタバタしてごめんね｣
｢いいえ！繁盛してて私も嬉しい！｣

むしろ、いつも長時間居座っている私の方が悪いんだ。謝られるようなことは何もない。
ポアロが人気で本当、嬉しい。

嬉しいけど

…正直、めちゃくちゃ寂しいよう～～！！

梓さんに見送られてドアを開ける直前、チラリと店内を見回す。
接客する安室さんは、いつも通りのキラキラスマイル。あからさまに喜ぶ女子。
あぁ………眩しいわ。私が帰ることにも気が付かない程、忙しそうな様子に胸がチクチク…う……せつない。

以前までは、私だけに冷たい店員さんが嫌だったけれど。
…今では、あの冷めた態度の安室さんが恋しくてたまらないです。

｢さて、どうしようか｣

とりあえずポアロから出た私。お昼時の現在、とにかく暑すぎる。そりゃ8月だもんなぁ……家に帰るか。

｢あづぃ…｣

清々しい程の晴天。ミンミン騒がしいセミ。うんうん、今日も元気に夏だ。

｢………うぇぇさびしいよぉ｣

夏は元気でも、私は全く元気じゃない。
ポアロで勉強できないことがこんなに悲しいだなんて、今まで知らなかった。
べそべそしながら歩き出そうとしたら、急に腕を掴まれて振り返る。

｢……っ！…安室さん？｣
｢今日は、もう帰るんです？｣

目の前には、とっても恋しかった(冷めた表情の)安室さん。嬉しい～～！
相変わらず冷めてて素敵だ。今だけは安室さんのことも好きになりそう。