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38、飲みたい私と止める彼 ページ38

「零さん、おさけ、おいしいねぇ」
「はい、ストップ。A…飲みすぎだ」

空になった自分のグラスにお酒を注ぐためボトルに手を伸ばすと、横に座る彼に止められた。
私から遠い場所へボトルを移動されて、なんだか気に入らない。
むっとして零さんを見つめると、可笑しそうに笑って髪を梳かれた。優しいその手つきが、とっても気持ちよくて幸せ。


「…すきあり!」
「……A」

私の髪に夢中な彼の隙をついて、素早く手を伸ばした。よしっ
目論見通り、まだお酒が残る彼のグラスをゲット。すぐにコクコクと喉に流し込んだ。
うん……やっぱりおいしい。


「お前、そんなに酒好きだったのか?」

子供っぽい行動に困ったように笑う彼は、私の手からグラスを回収しながらそう聞いた。かえして〜
奪われたグラスを取り戻そうとしたら、伸ばした手をぎゅっと掴まれてしまった。

お酒が好きなのか……自分の事ながら、正直よく分からない。友達と居酒屋に行った時に少し嗜む程度だったから、そもそも量を飲んだことが無いし。1人の家では飲まなかったし。

……今まで別に美味しいとも思わなかったし。

首を傾げて、『わかんない…』と呟いたら、彼はまた笑った。

「その割にはペースが早いな」

今日は、初めて零さんと一緒にお出かけしたんだ。
髪を乾かして貰って、彼の美味しいご飯をたべて、大型のショッピングモールを一緒に歩き回って、少しだけ海に寄って……。今はこうして、彼の家で一緒にお酒を飲んでいる。

思い返すだけで頬が緩んだ。一緒に居られるだけでこんなに楽しいんだよ。
ペットショップにいた子犬が可愛くて可愛くて……しばらく釘付けになって、動けなかった。動物って本当に癒される…。
『いつか、飼えたらいいね。』なんて話をして。
もし現実になったら、とっても素敵だね。


「お酒は……今までそんなに、飲んだことなかったの」
「そうか」
「でもね、零さんといっしょだと……すごく美味しいね」

首を傾げてへにゃりと笑いかけると、彼の頬が少し赤くなった気がした。気のせい?でもなんかいつもより可愛く見えて……胸がきゅんとした。年上可愛い。

ぽんぽんと私の頭を撫でてから自分のグラスにお酒を注ごうとするので、全力の『わたしも!』コールを連発した。
少しの間睨み合い。

結局、彼が大きな大きなため息をついて…

「……あと1杯だけだからな」


勝った。

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作者名:re | 作成日時:2021年1月27日 18時

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