冷たい店員さんと私の関係 (ページ35)

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35、長い長い夏休みページ35

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｢おわったぁ……｣

7月末。私にとって全てのテストが終わり、これでようやく長い長い夏休みに入る。
ガヤガヤと騒がしい教室内で大きく伸びをした。う～ん！この解放感がたまらなく好きだ。

これで国家公務員試験の勉強に専念できそう。警察庁のインターンも夏休み中にあるなぁ、零さんの職場を生で見られる機会か……うわ、な、なんか考えただけで緊張するよう。

｢A、大丈夫？｣

ぶんぶんと頭を振っていたら、後ろに座る友人に心配されてしまった。

｢大丈夫……生きるって、大変だね…｣
｢あんたどこ見てんのさ…｣

呆れたようにそう言いながら、遠い目をしていた私の目の前でヒラヒラと手を振る。……ここで悩んでいたって仕方ない。ふぅ、と息を吐いてから私は帰りの支度を始めた。

友人達に挨拶をして、1人廊下を歩く。
『楽しい夏休みを～』なんて言い合ったけど、みんな就活への悲しみが顔に出ていた。うん……私も鬼教官(安室さん)の顔を思い出すと、やる事が山積みで泣きそうだ。
でもわたし絶対！やるんだから！

強い決意を胸に早足で歩いていた私だったけれど、突然足取りが重くなってピタリと止まる。

｢あっ…つい……｣
校舎を一歩出れば、盛大なセミの声とドロドロに溶けそうな熱気にお出迎えされた。空はため息が出るほどの晴天、白い入道雲。加えてこの暑さ。はぁ、日本の夏。
こんな天気がいい日は海とか行きたくなるよね……。
一瞬で滲む汗にため息を零す。

今日は零さん、ポアロにいるかなぁ。早く『頑張ったな』って褒めて貰いたい……あ、だめだ。あそこにいるのは安室さんだ。

『あぁ、そうですか…お疲れ様です』と、感情の篭っていない安室さんの声が頭の中で再生されてギリリと歯を食いしばる。

ゴソゴソとバッグからスマホを取り出して、電源をつけた。
スマホが起動すると、届いた通知の中に零さんからのメッセージを発見。

『今日、午後から家にいる』。

そんな簡潔な一文だった。
なんてことだ、零さんがオフだなんて…珍しい！

テスト最終日、2コマで終わって本当に良かった……ありがとう神様。お昼も一緒できるかな。

『テスト終わった今からすぐいく！』JKのような指さばきで返信をして、歩き出す。
さっきまでの気だるさが嘘のように、一瞬で私の足取りは軽くなった。あぁ、全く。なんて単純。
恋する女子なんてこんなもの。

ポアロから降谷零宅へ行き先変更。速攻向かいます！