33、かわいい零さん ページ33
ポアロの閉店後、いつも通り彼と2人で家に帰ってきて……今はソファーに並んで座りながら、パラパラとテキストを読み返していた。
｢……お前、同級生の男にあんな冷たいのか？｣
唐突に思い出したのか、クスクスと可笑しそうに笑う零さんが言った。今日のポアロでの出来事についてだろう。……同級生と一緒にいる所を零さんに見られるのは、なんだかとても恥ずかしかった。
同級生に冷たい、というか……元はと言えば講義をサボるあの人が悪いんだし。まぁ、途中で彼の存在を忘れた私にも非はあったけれど……というか！そもそも、大学生にもなってお店で寝るなー！
別に、男の人に冷たくしてる訳じゃないんだよ。
でも……私には、大好きな人がいたから。
｢だって、私……昔から零さん以外に興味ないんだもん｣
ーお友達は女の子だけで十分です〜
肩を竦めてそう言えば、彼は少し嬉しそうにケラケラと笑った。うっ、
……その顔、とてもすきです。
｢そう言えば、今までポアロに友達を連れて来ることがなかったな｣
｢うん。集中できなくなっちゃうからね｣
｢Aらしい｣
私の友達は、放課後1人で勉強したいことも、今は就職のために頑張っていることも…全て理解してくれている。
『優しい子達なの』と笑うと、彼は微笑みながら頷いた。
｢友達と会話してるAを見るのは、なかなか新鮮だったな｣
｢ん〜そう？｣
首を傾げながら彼の顔を覗き込む。
まぁ、確かに……当たり前のことだけど、私にとって零さんはいつまでも年上で。子供の時から、自分よりずっと大人に見えてた。
友達はいたけれど、放課後はいつも大好きな零さんにくっついてたし……。私が同い年の子と一緒にいる場面自体、ほとんど見たことが無かっただろう。
なんて昔のことを思い返していたら、私の髪をそっと梳きながら彼が突然呟いた。
｢呼び捨てで名前を呼んでたのは…｣
ーちょっと、嫉妬した。
あ、やばい。胸がキュンとして息が詰まる。何この破壊力。
……こんなにかっこよくて、いつも余裕がある零さんも、嫉妬してくれるの…？
思わずニヤけそうになるのを必死に堪える。どうしよう、嬉しい。
年上だけど……
｢零さん……か、かわいい…っ｣
なんだよう、子犬みたい……本当にかわいい。かっこいいのに、可愛い！
堪えられずふにゃりと笑いながら彼の柔らかな髪を撫でていたら、急に不機嫌そうな顔をした彼が私の身体を軽く押した。
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作者名：re
| 作成日時：2021年1月27日 18時
