31、私が嫌いなタイプ ページ31
ーー
｢あれ？Aだ｣
｢ん？｣
授業が終わった、大学からの帰り道。あと少しでおやつ時の屋外はまだまだ陽が高くて……結構あつい。
ルーティンになっているポアロまでの道を急いで歩いていたら、突然声をかけられて振り返る。
ちょうど通り過ぎたばかりのコンビニから出てきたその人は、私と同じ学科の友人だった。
｢春樹｣
｢今帰り？｣
｢そうだよ。あんた、今日講義サボったでしょ……何してんのさ｣
私は至って真面目な生徒であるので、こういうサボり癖のある人はとても嫌いだ。もちろん本人の自由なので好きにしたらいいけれど。
……後々焦って助けを求められたらたまったもんじゃない。自分でしたことは全て自分で解決してくれ。
腕を組んでジト目で見つめれば、彼はヘラヘラと笑った。
｢バイト。人足りなくなったって言われてさ｣
｢ふぅん……それはお疲れ様でした！｣
彼は自分が出てきたコンビニを指さしながら笑った。
よーし！
……さっさとポアロに行こう。夏休みがだいぶ近づいてきた今、もう定期試験は目前。
いつにも増して勉強のことで頭がいっぱいな私は、ヒラヒラと手を振りながらすぐに歩き始める。
あろう事か、彼も後ろから着いてきた。
……なんて厄介な。
｢なぁ今日の講義、どんなだった？｣
｢どんなって言われてもねぇ……｣
｢テストに重要なやつ？｣
私の前に回り込んで、なにやら心配そうに聞いてきた。
むむむ、前方を塞がれた。本当に面倒なヤツ……大きなため息を1つ吐く。仕方ないので足を止めて腕を組みながら彼と対峙した。
はぐらかそうかとも思ったけど、まぁ……普通に答えてやるか。
『もちろん』と、満面の笑みで大きく頷く。その瞬間、彼の顔からサーッと血の気が引いた。お可哀想に。
｢A！頼む！！今日の講義内容写させてくれ｣
｢やーだよ｣
自業自得です。
べーっ、と舌を出して歩き出す。彼の横を通り抜けようとしたらすぐに手首を掴まれた。
いつも零さんにされるのと違って、やたら力が強い。痛みで一瞬顔が歪む。
｢頼む！｣
｢ちょ、ちょっと……｣
はぁ……もう、面倒な。これだから講義おサボりマンには会いたくなかった。
OKを出すまで引いてくれない気がしたので、仕方なく頷く。
『よっしゃー！』なんて嬉しがる彼に聞こえないよう、深いため息を零して私は歩き出した。
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作者名：re
| 作成日時：2021年1月27日 18時
