24、熱のせい ページ24
ーー
｢んっ……｣
｢A？｣
目をゆっくり開けると、そこは見慣れた零さんの家のようだった。声のした方へ顔を向けると、大好きな彼が私の顔を覗き込んでいて。
｢…零さんだ｣
ちゃんと話ができる私を見て、彼が大きなため息をついた。
｢……本当に、心配した｣
｢大げさだよ、れいさ……いたっ！｣
ぺち、と額を叩かれて驚く。この人！病人に手を上げました！
って、あれ？……零さん？
｢大げさ？冗談じゃない｣
地を這うような、ゾクリとする声色に身体が震えた。
ひぇっ……な、ななんで本気で怒ってるの……？
｢お前、軽い脱水症状まで起こしてたんだ｣
｢えっ｣
彼は何故かすごく、泣きそうな顔をしていた。
私の手をぎゅっと痛いくらいに握って、小さく呟かれた言葉。
『……間に合って、本当によかった。』
それを聞いた瞬間、私がどれだけ…貴方に心配をかけたか。やっと理解したの。
｢ご、ごめんなさい…｣
｢まだ熱が下がってないだろ｣
ポイッと体温計を投げ渡されて、慌ててすぐに測る。
測定終了音が鳴った瞬間、私より早く体温計を脇から抜き取った彼が顔を顰めた。
｢37度8分｣
｢…｣
本当にすみまぜん。
｢零さん、迷惑かけて本当に…ごめんなさい｣
｢……俺、普通の人より危険な生き方をしてる｣
｢へっ？｣
な、なに？急に、どうしたの？
｢だからちょっとした事では動じることもなかったし、何かトラブルがあっても頭はいつも冷静で。的確な判断が出来ると思ってた｣
｢……｣
｢今回、Aが眠っている間……どうしようもなく焦った。冷静でなんか、いられなかった｣
苦しそうに俯く彼を見ていたら、胸が張り裂けそうなほど痛んだ。すぐにベッドから起き上がって、彼の頬に触れる。
……ごめんなさい。こんなに辛そうな顔させて、本当にごめんなさい。
｢Aがいないと生きていけないって本気で思うくらいには、お前に惚れてる｣
｢……え、…れいさ｣
惚れて、る…？って言ったの？いま、
固まる私の姿を見て、やっと安心したように笑った彼は。
両手で私の頬を包んで、そっと触れるだけのキスをした。
｢な、なん……｣
｢熱のせいだよ｣
熱出てるのは私だよ！！と心の中でツッコミを入れた。
真っ赤な顔で口をパクパクさせていたら、クスクスと笑った彼は頭を優しく撫でて立ち上がった。
｢お粥、持ってくる｣
寝室の扉がパタンと音を立てて閉まった瞬間、私は声にならない叫び声を上げながらベッドへと倒れ込んでいた。
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作者名：re
| 作成日時：2021年1月27日 18時
