9、友達の距離感 ページ9
長時間ベッドを占領してしまった事実に情けなくなる。ほんと図々しい奴…。
欠伸を噛み殺すと、クスクスと笑った降谷に『眠そうだな』と声をかけられて。
「おはよ…」
「おはよう。まだ寝てていいぞ」
「ううん、大丈夫。…ごめん降谷」
身体を起こすと、ベッドに腰掛けた降谷が手を伸ばした。
日焼けを気にする私とは対象的な、彼の綺麗な褐色の肌。その指先が壊れ物でも扱うように優しく、私の目の下を撫でる感覚が少しだけ擽ったい。
降谷の手に触れると、余計に肌の色の対比が際立つ。私はこいつの肌の色が好きだ。
目の下を撫でていた彼の指先は、今度は頬をむにむにと弄びだして。何だか可笑しくなって、笑いながら『なぁに?』と問いかけた。
「腫れがだいぶマシになったな。…少し冷やすか」
「ほんと?…良かったぁ」
「あの酷い顔のままだったらどうしようかと心配してた。もう恋人が出来ないんじゃないかって」
「うおーい!余計なお世話だわ!仮にも女子に " 酷い顔 " なんて言うんじゃない…って、笑顔胡散臭っ…」
イラッとするくらいの作り笑顔を向ける降谷。こんな顔初めて見た。…怖っ!!違和感がありすぎて鳥肌立ちそう。
ほっぺを引っ張ろうとしたら、私より素早く動いた彼に額を叩かれた。くそ。
「ばかばか!」
「随分元気になったじゃないか。良かったな」
「それはもう、本当に感謝しています!ありがとう!!」
「どういたしまして。」
ケラケラと笑う降谷に頬を引っ張られ、喚きながら暴れていたら、呆れたようなため息が頭上から零れ落ちて。
2人で顔を上げると、景光が私達の様子を眺めていた。
「ん?」
「……お前ら、その距離感で付き合ってないとかマジか」
「どう考えてもマジでしょ。というか、振られたばっかりの私になんてこと言うの景光…」
「ごめんごめん」
降谷と付き合うなんて有り得ない。
こんな顔面良すぎる男、万が一恋人にしてしまったら毎日不安になるわ。
しかも同じ大学…って、女子に告白されてる所を見まくって気がおかしくなりそう。ついでに降谷のファンに殺されかねない。
「降谷は私の事どう思ってるの?」
「ん?いつも振られて大変そうだなって」
「くそ。…毎回慰めてくれてありがと」
これが全てだ。
降谷には恋愛感情なんか、これっぽっちもない。ただひたすらにお人好し。……本当に良い奴だな。
私達のやり取りに、景光はただ困ったように笑っていた。
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re(プロフ) - そこらにいるオタクさん» そこらにいるオタクさん、コメントありがとうございます!お話楽しんで頂けてとっても嬉しいです…!(*^^*)保護者は苦労します…笑 そして、やはりバグなんですね(;-;)教えて頂いて感謝です…!更新する際は気をつけます、ありがとうございます! (2021年9月28日 18時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
そこらにいるオタク(プロフ) - コメント失礼します 作品いつも楽しく読ませていただいてます 保護者諸伏さん頑張れ! あと私もたまにその様なバグがありますね 一旦前のページに戻ればバグはなくなるのですが (2021年9月28日 5時) (レス) @page23 id: f5a7aaca63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年9月23日 7時