35、変わらない関係 ページ35
『どうして?なぜ?好きなの?』って問い詰めたいけれど、これ以上バカにされるのは何となく癪に障るから…何も聞けなくなった。
嘘。
本当は『お前なんか好きじゃない』って言われるのが怖いだけ。
「僕のこと何とも思ってないんだろ。キスくらいであんなに真っ赤になったのは何故?」
「…降谷の顔が良すぎるからでしょ。ばか」
「は?」
「だ、か、ら。腹立つくらい、顔がいいの。至近距離であんたの顔なんか見たら心臓が持たないわ」
きょとんとする降谷に、ため息が零れる。
その顔は可愛いな。
「随分前に言ったじゃん……『顔が良すぎる人とは付き合えない』って。恋人が女子にチヤホヤされるのは心配になるから」
「…あぁ、そういえば…そんな事言ってたな」
「え?寧ろ、そんな私だから一緒にいてくれるんでしょ?降谷」
「いや、それが全てじゃないけど」
「ほう?…まぁ、いいや」
頭が混乱しすぎて、何も考えたくなくなった。
お酒に口をつけながらぼんやりと思い出すのは、封じ込めたはずの…降谷への恋心。
何でだろう。何で降谷は私にキスなんか…
「お前、それ飲んだら帰れ。送ってやるから」
「ん〜…なんか帰るの面倒くさくなっちゃった」
「まぁ、別に泊まってもいいけど。何があっても文句言うなよ」
「……これ飲んだら帰るね?」
「そうしてくれ」
私の返事にケラケラと笑った降谷は、そっと髪を梳いてくれた。
その表情が優しすぎて、頬が熱くなる。
降谷が嫌だとか、触れられたくないとか…それは全く思わなかったし、例え結果的にそういう行為に及んだとしても文句なんて無かったと思う。
だけど…もし関係を持ってしまったら、次に会う時、どんな顔すればいいか分からなくなるから。
だから、私の家までの暗い道を降谷と並んで歩いたんだ。
いつもと変わらず、下らない話をして笑いながら。
「あぁ、そうだ。1つだけ僕のこと教えてやる」
「ん?何ですか降谷サン。めちゃくちゃ興味あります!」
「僕が警察官を目指す理由」
「ほう。聞かせて」
「初恋の相手を探すため」
「な、なんだってー!真面目な君がそんな浮ついた理由で…!?ちょっと、その話詳しく…」
「嫌だ」
「おいおーい!」
この日、勢いでしたキスのことを、降谷はどう思っていたのかは分からないままだけど。
多分、卒業するまでお互いに覚えていたと思う。
それでも暗黙の了解のように、このキスについて口にすることはなかったし…
私と降谷の関係が変わることもなかった。
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re(プロフ) - そこらにいるオタクさん» そこらにいるオタクさん、コメントありがとうございます!お話楽しんで頂けてとっても嬉しいです…!(*^^*)保護者は苦労します…笑 そして、やはりバグなんですね(;-;)教えて頂いて感謝です…!更新する際は気をつけます、ありがとうございます! (2021年9月28日 18時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
そこらにいるオタク(プロフ) - コメント失礼します 作品いつも楽しく読ませていただいてます 保護者諸伏さん頑張れ! あと私もたまにその様なバグがありますね 一旦前のページに戻ればバグはなくなるのですが (2021年9月28日 5時) (レス) @page23 id: f5a7aaca63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年9月23日 7時