29、私の尊敬する人 ページ29
「どんな決断をしても、僕はAの味方だ。それは変わらない」
「…」
堪えていたはずの涙が、頬を伝った。
慌てて拭うと、いつものように笑う降谷に『泣くな』と額を弾かれて。
普段なら腹が立つのに、今日はデコピンさえも少しだけ嬉しくて…何度も頷きながら、『ありがとう』と呟いた。
「……ただし、あの時のように授業までサボって慰めるのはもう勘弁だけどな」
「ハイ!その節は、誠にすみませんでした!!」
ケラケラと笑う降谷に、私も釣られて笑ってしまう。
" 付き合うなら、もう振られるなよ " って言ってるんだな。
降谷は優しいね。…本当にありがとう。
私を励ますように、背中をポンと叩かれて1歩前に出る。
大きく息を吐いて、零れた涙を拭って。
スーツの彼を真っ直ぐに見つめた。
久しぶりに会ったけど、全然変わってない。楽しかった記憶のままの姿に、安堵して。…元気そうで本当に良かった。
「…」
私のこと、好きになってくれてありがとう。
また付き合いたいと思ってくれて、ありがとう。
私を忘れないでいてくれたこと、すごく嬉しい。
心から、大好き……
だったよ。
「ごめんなさい」
「……Aちゃん」
ごめんね。
「私の大好きな恋人…この人なの」
「…っ、A」
こんなの良くないって分かってるけど。
…さっきの仕返し。
降谷の腕を強く引いて、その大きな手に指を絡めた。…あったかい。
驚いたように私を見つめる降谷に、小さく笑う。
あれ?降谷クン、本気でびっくりしてるの?
珍しいね。
「何に対しても一生懸命で…友達想いで。人として、誰よりも尊敬してる。私、どうしても…この人の傍にいたい」
「そっか…」
「だから、ごめんなさい」
頭を下げながらそう告げる自分の声が、少し震えた。…私からこんな風に断ることが少ないからかもしれない。
『分かった』と微笑んだ彼は、別れの挨拶を告げ帰ろうとして。すぐに振り返った。
「…?」
「本当はちょっと悔しいけど…そのイケメンの彼氏に、大切にしてもらって」
「…」
「俺のせいで泣かせてごめん。…だから、それ以上に…幸せになってね」
「…うん。ありがとう」
優しい人。そんな貴方が好きだったよ。
私の傍から本当に去っていく、彼の後ろ姿をぼんやりと眺めていた。
付き合っていた時のこと、無意識に色々と思い返していて…
「A。行くぞ」
降谷に繋いだままの手をぐっと引かれて、反対方向へ歩き出す。
手に力を込めて、『うん』と頷いた。
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re(プロフ) - そこらにいるオタクさん» そこらにいるオタクさん、コメントありがとうございます!お話楽しんで頂けてとっても嬉しいです…!(*^^*)保護者は苦労します…笑 そして、やはりバグなんですね(;-;)教えて頂いて感謝です…!更新する際は気をつけます、ありがとうございます! (2021年9月28日 18時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
そこらにいるオタク(プロフ) - コメント失礼します 作品いつも楽しく読ませていただいてます 保護者諸伏さん頑張れ! あと私もたまにその様なバグがありますね 一旦前のページに戻ればバグはなくなるのですが (2021年9月28日 5時) (レス) @page23 id: f5a7aaca63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年9月23日 7時