2、甘い甘いミルクコーヒー ページ2
ついさっきまで家でひとり、散々泣いていたというのに…涙って案外枯れないものだ。と、降谷が優しすぎて歪む視界のままぼんやり考えた。
可愛いパックにストローをさす。いつも以上にゆっくりと吸うと、口の中に甘さが広がった。…はぁ、沁みる。
「おいじぃ…」
「それは良かった。今回は……合コンで知り合った米花大の男、だったか?」
「ちがう…それは前の人。今回は先輩の知り合い、社会人だった…」
ー本気で、すき、だったなぁ。
ポツリと呟けば、降谷はまた大きなため息をついて。
子供を宥めるように優しく。頭を撫でてくれた。
その瞬間、意図せずボロボロと涙が溢れ出て……
「…お、おい……A」
「ご、め……お気に、なさらず…っ」
すぐにカバンを開いてハンカチを取り出す。涙を拭おうと思ったら、急に立ち上がる降谷。なんだ?
驚いて顔を上げると、荷物をまとめた彼が私の腕を強引に引いた。
「え、……えぇ?降谷、どした」
「どうした、じゃない。そんな状態で講義なんか受けられないだろ?帰るぞ」
「え?帰る…?おい優等生、授業サボるな」
「早くしろ。他の奴らにそのひどい顔見られてもいいのか?」
「嫌ですね」
私の荷物も持った彼は、まだボロボロと涙を零し続ける私を引っ張って教室から出た。
講義開始時刻が近づくにつれて、校内には人が溢れかえる。ハンカチで涙をぬぐいながら降谷に腕を引かれる情けない私を大人数に見られるわけにはいかない。
よし、走ろう。
突然猛ダッシュし始めた私に、降谷がケラケラと笑った。
「どうせ気持ち悪くなるんだから、やめろ」
「……もう気持ち悪い」
「歩け、バカ」
空っぽの胃には甘い甘いミルクコーヒーだけ。昨日一睡もできず、泣き続けた寝不足の私のライフはもはやゼロだ。ゼロ。
「振られまくる女も大変だな。A?」
「うるさい。彼女いないくせに」
「別にいらないから」
「くそ、腹たつ……ばか降谷」
「朝食作ってやろうと思ったのに」
「ごめんなさい」
恋に生きる女、七瀬A。
不本意ながら、付き合っては " 絶対に振られる " 運命らしい。その度に慰めてくれるのが、この降谷零という、よくわからない男である。
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re(プロフ) - そこらにいるオタクさん» そこらにいるオタクさん、コメントありがとうございます!お話楽しんで頂けてとっても嬉しいです…!(*^^*)保護者は苦労します…笑 そして、やはりバグなんですね(;-;)教えて頂いて感謝です…!更新する際は気をつけます、ありがとうございます! (2021年9月28日 18時) (レス) id: 963c697df1 (このIDを非表示/違反報告)
そこらにいるオタク(プロフ) - コメント失礼します 作品いつも楽しく読ませていただいてます 保護者諸伏さん頑張れ! あと私もたまにその様なバグがありますね 一旦前のページに戻ればバグはなくなるのですが (2021年9月28日 5時) (レス) @page23 id: f5a7aaca63 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:re | 作成日時:2021年9月23日 7時