君を振り回したい僕 2【降谷零】

60、部下からの説教 ページ27

ーー

瞼を開ければ、真っ白な天井が視界に入る。

身体の至る所に走る痛みに眉を顰めながら、室内を見渡してため息をついた。

…病院か。

｢…｣

僕の潜入捜査は、本当に終わったんだな。


コンコンと、ドアをノックする音に『はい』と返事をする。

｢あぁ、風見｣

ドアを開けた風見は、目が覚めた僕を見て『良かった…』と呟いた。

｢医者を呼びます。…お加減、どうですか？｣
｢痛みはあるが、問題ない。｣


鎮痛剤によって軽減した痛みに、安堵の息をつく。

医者と看護師が個室から出ていった直後、『少しいいですか』と風見に声をかけられて。

｢…何だ｣

｢貴方って人は…本当に、何を考えているんですか！！｣

突然の事に面食らう。
ぱちぱちと瞬きを繰り返して…

｢…僕は、君に説教をされているのか？｣

｢当然です！Aさんが、どれだけ動揺して…泣いていたと思います？！｣

…A。

風見の口から出た、その名前に。
昨日の夜を思い出す。彼女は、泣きながら僕を…呼んでいたんだ。


｢私が降谷さんに連絡をした時、それを受けて下さったAさんは…泣きながら『助けてください』と叫んだんです｣

｢…｣

｢降谷さんのお気持ちも、分かります……ですが、一般人であるAさんの事を考えてあげて下さい。…貴方が生きているから良かったようなものですよ｣


……本気の説教じゃないか。

正論過ぎてぐうの音も出ないが。

｢そう、だな｣

｢今も…すごく、心配しているはずです｣
｢…あぁ｣

意識が落ちる寸前まで、彼女の叫び声が聞こえていた。

何よりも大切なはずの彼女を泣かせたのは、紛れもなく…僕だ。


｢すまなかった｣

｢いえ…謝罪ならAさんに。それから…怪我人は多いですが、公安に限らず今回の関係者、皆無事でした。降谷さんのお陰です｣

僕のお陰なんかじゃない。

｢…良かった｣

｢彼女さんに連絡してあげてください。今も、貴方を信じて待っています｣
｢あぁ｣

僕に携帯を渡した風見は、急に小さく笑った。

｢何だ｣
｢本当に " お隣さん " だったんですね｣

｢…やっと昨日、" ただのお隣さん " ではなくなったな｣

小さく笑い、記憶していたAの電話番号をタップして…

通話を押す直前、指を止めてドアに視線を移す。

｢外で盗み聞きしている奴らをなんとかしてくれ｣

態とらしく声を張ると、焦って廊下を走る足音が聞こえた。

｢…はぁ｣
｢皆、降谷さんの事が心配なんですよ｣

｢…ただの興味本位だろ｣

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